〈原田 〉皆さんから事前に提出して頂きましたアンケートを拝見いたしました。私の見た正直な感想を申し上げますと、ほとんどの課題は特に改まったものではなく、現在の延長線上のものと言えるのではないかと思いました。数値的に見ましても年10%前後の利益増を狙ったものでした。この程度の目標であれば、社長または事業部長の一喝で、ほとんど達成することが可能でしょう。

ただ一社だけちょっと今までの延長線では難しく、『ブレークスルー』の考え方を必要とする課題がありました。その目標は3年後に営業利益を今期の5倍にするということです。5割ではなく500%増です。もう一つの目標が現在赤字の部門を半年後の年度末までに、黒字体質にするということです。ちょっと考えたときには、「そんなこと無理だ」と計画そのものの無謀さを強調したくなると思います。しかし『ブレークスルー思考』の課題の設定は、まさにこのようなレベルにあるべきなのです。そこで今回10%前後の目標値の企業さんには、最低でも2倍の目標値に上げて実践に取り組んで頂きたい。

ほとんどの参加者は原田講師からの高い目標設定に戸惑いを隠せず、同僚同士顔を見合わせている。A社の課長はおもむろに立ち上がり話し始めた。

〈A社 〉先生、私どもの会社では毎期それなりの利益を計上しておりまして、社内コンセンサスとしましても次年度10%の増益で”ヨシ”としております。先生のご指摘の2倍はとても高すぎる目標です。

講師の原田は笑みを浮かべて応えた。

〈原田 〉本日お集まりの方の多くはA社さんと同じような感想をお持ちのことと思います。先ほど申し上げた通り、10%、20%の増益であれば、たいていの場合はトップのやる気や号令でほぼ達成できてしまうことが多いのです。A社さん、10%の増益目標に対してある程度の道筋を既にお持ちではないでしょうか。その道筋の妥当性を検証するのが目的で、このセミナーにご参加されたのではないでしょうか。

A社の課長はズバリ読まれてしまい返答に困りながら

〈A社 〉ハッキリとした道筋が描けているわけではありませんが……。

と、言葉を濁した。

〈原田 〉2倍の利益計画が立案できた場合でも、社内で不採用になることがあるのですか。そんなことはないでしょう。

〈A社 〉分かりました。失礼な発言を取り消します。申し訳ございませんでした。

〈原田 〉A社さんと同じ気持ちの方も多いと思います。毎回同じような傾向です。しかし実際に大きな目標値に変えて研修を進めて最後にまとめてみますと、一様に驚きと満足感を持ってお帰りになっています。したがいまして今回も敢えて高い目標でセミナーをスタートしましょう。
 

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『企業覚醒』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。