第4章 分譲マンションの終焉処理

管理組合の解散時期から逆算してマンション生活の将来安心計画を立てる

将来安心計画とは、マンションの終末期対応まで考慮した、超長期修繕計画書の作成をすることです。それと並行して重要なことは、当該分譲マンションの区分所有者が、将来の対応について意識を共有する、すなわち大きな方向性を合わせておくことです。

少数の反対者はおられるかもしれませんが、大きなところでの区分所有者の賛同というか理解が得られることが最重要です。終焉期対応といっても、その時期に解散することを強制するのではなく、延長するにしても、また、実行するにしても、基本的な終焉対応計画書を準備しておけば、将来に対する安心が得られることになります。

勉強会や検討会で、理解を深めておくことが必要なことです。この将来安心計画があれば、将来に対する漠然とした不安が消え、心に余裕も生まれ、将来とも安心感を持って生活をすることができると思います。

耐用年数の想定

特に決まりはありませんが、かと言って、無限ではないと考えられます。そこでひとつの指標としてですが、建築学会のコンクリート耐久設計基準強度の指標(※8)があります。これを受けて(社)高層住宅管理業協会の建物の耐久性とコンクリートの品質(※9)の指標があります。これらに依りますと、新築工事の時に打設したコンクリートの圧縮強度により耐久性の限界期間が示されており、普通コンクリートで強度が18N(※10)ならばコンクリートの耐久性の限界期間が約65年、普通コンクリートの強度が24Nならばコンクリートの耐久性の限界期間が約100年となっています。

本書では、マンションでの使用頻度が多いと思われる普通コンクリートの強度を21Nと想定して、コンクリートの耐久性の限界期間を約80年としました。また、新築から住み始めて当初の当該居住者が「自分自身あるいはその家族の生活を営む為に住む」という当初の目的を叶えるのに充分な時間を見込んだ、築80年を耐用年数のひとつの指標とすることに合理性があると考えます。

コンクリート構造物の耐用年数には、色々な考えを持つ専門家もおられます。もちろん築80年近くに至った時に、区分所有者の皆様の判断や希望で、建物の存続期間を延長することも可能と考えています。

※8  建築学会:コンクリートの耐久設計基準強度(JASS5 1997年版)
(社)高層住宅管理業協会:マンション維持修繕技術ハンドブック2007年版

※10  「N値」:「えぬち」といいます。コンクリートの強度を表わす数値。詳しい単位はN/ミリ平方メートルでニュートン(N)で表わします。例えば21N(=N/ミリ平方メートル)のコンクリートは平方メートル換算で重量2,100トンを1平方メートルの断面積で耐えることができるコンクリートです。実際の建物の計算では安全率をみて、その1/3として計算します。