ようやく終点、極楽橋駅に到着。ここから、ケーブルカーで山頂へ。回りを見ると、外国人、特に欧米からの観光客がやたらと目立つ。高野山というよりスイスアルプス感がする。

ケーブルカーの中では、フランスから来たらしい娘さんに、大阪のおばちゃんの一団が、英語らしき言葉でしきりに話しかけては大笑いをしてグイグイ圧倒している。娘さんは為す術すべもない。

マドモアゼル、ケーブルカーの外に弾き出されないようにしっかり吊り革を握っていなさい。まずは、空海にご挨拶をと、山頂駅からタクシーで、弘法大師御廟へと向かう。許された活動時間は三時間しかないので時間を節約だ。

一の橋から御廟へと十七kmの参道を歩く。参道の両側には、なんと約二十万基もの墓が! それらの墓は、皇族、公家は言うに及ばず。

織田信長、上杉謙信、武田信玄等の戦国ヒーローの墓もあれば、徳川将軍家から大名家の墓まで、大河ドラマの主人公級の墓が目白押しだ。

そうか、ここは、世界最大級の墓フェス会場なのだ。

ちょっと待った! 法然、親鸞といった他宗派の開祖たちの墓もあるじゃないか。ご近所付き合いは大丈夫か、ゴタゴタは起きないのだろうか。これが、高野山の宗派を超えた懐の広さだろうか。

なんと、PanasonicやUCC等の大企業から中小企業の墓まであるぞ。一体、企業の墓って誰が入るのだろう? 至る所にある巨大な五輪塔は、日本史を彩った傑物たちが、現世の妄執から解き放たれ、ひっそりと佇んでいるようにも見える。

無常観の中に身を置き、時代の移り変わりを見つめてきたのだろう。

今、何を思っているのか。日本史をギュッと凝縮した墓所を見て興奮するうち、御廟に到着。たくさんのお遍路さんたちが、巡礼完了の報告に来ている。お疲れ様でした。

入定にゅうじょう(即身成仏、つまり生きたままミイラになること)した空海は、御廟に祭られており、いまだに生きて我々に救いの手を差し伸べているとして、朝夕、僧侶が食事を御供えしているそうだ。

勤続千二百年。空海ほどの人物になると定年などないのだろう。