講習会

長田は家に帰ると本日の出来事を妻の多恵に話した。そして9月23日から24日の連休に講習会に参加することも話した。幸いなことに連休の予定を組んでいなかったので、トラブルも起きなかった。また、経営企画室の課長という立場上、休日出勤も月2回くらいと比較的多く、多恵としても「またか」という感覚であった。

長田慎一と多恵は社内結婚であった。多恵は総務課の中の購買部門を担当していたので少しは購入品の価格や製品コストについての知識を持っていた。

〈多恵 〉あなた、利益を5倍にするのに、どのくらい売らないとならないの。

〈慎一 〉単純に計算すれば、今の20億円の5倍。100億円だよ。

〈多恵 〉そんなこと無理に決まっているじゃないの。何か良い魔法の手でもあるの。

多恵の追及は当を得ていて厳しいものであった。

長田は落ち着いた口調で話し始めた。

〈慎一 〉今日の今日で何の方策もない。真っさらの状態だよ。だからその糸口を求めて講習会に参加することになったんだよ。山田部長のところにたまたま届いたダイレクトメールの中身を見ると、今まで目にする内容とちょっと違っていて、額面通りの内容であれば期待ができそうな気がするんだ。取り敢えず何もしないでただ暗中模索の状態でウロウロするより、少しの望みでもあれば行動に移すべきときなんだよ。

長田はそこまで一気に話をすると今日配られた講習会のチラシを多恵に見せた。そこにはゴシック体で主に次の三点がキャッチフレーズとして書かれていた。

○ 新たな発想「ブレークスルー思考」

○ 経営計画は欲しい利益からの発想で立案

○ 従来の延長線上の利益計画からの脱却
 

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『企業覚醒』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。