遠隔診療に関しては、最近テレメディスンと呼ばれています。テレメディスンは「テレ(遠隔)」+「メディスン(医療)」の合成語で、通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為を指します。

テレメディスンには「Doctor to Patient (D2P)」と「Doctor to Doctor(D2D)」の2つのタイプがあります。「D2P」は、ビデオチャットなどで医師が直接患者さんを診るというものです。D2Dは「主治医」と「専門医」の間で、医療用画像を伝送して、より高度な助言を受けるといったものです。

例えば、CTやMRIからの画像を送信して、専門医に読影してもらう遠隔放射線診断、手術中に患者から採取した病理組織画像を伝送し、遠隔地で病理診断を行う遠隔病理診断といったものがあります。皮膚科や眼科領域の遠隔診断支援アプリ「ヒポクラ」では医師が病変の写真を送ると、12時間以内に専門の医師が診断や治療法を提示してくれる無料のシステムがあります。これらは地方の医師不足を一部解決してくれる可能性があります。

このようにIoTの普及は貨幣化できる価値ではなく、人々の幸福や繁栄に寄与する価値が提供される可能性があり、今後は国民総生産(GDP)では測れない経済的価値の創出が起こります(図表5-9)。

 

これからはまさにIoT からInternet for human の時代と言われます。今後の医療経営においても、医学部と工学部の連携は重要であり、既に東北大学大学院には医工学の講座が設置されています。
 

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。