その言い訳もこうだった。 「友達の平野に迷惑がかかると思った。特に隠すつもりはなかった」

この供述の出方、それと農家の主人が見た車の特定、平野と高山がスナックを出た時間の詰めができなかった点、それに唐突な感じが否めない本件の動機、ひっかかりがなかったと言えば嘘になる。

しかし、高山は一貫して犯行を認めていた。

それに、その殺害状況にも不審な点はなかった。社長が脅しをかけてから「よく考えろ」と言って、自分の机の上のタバコを手に取って座っていた椅子を回転させ、タバコに火をつけようと背を向けていた時、その後頭部を文鎮で一撃したというものだった。

高山は、社長が座った椅子のすぐ横、脇机の上にあった物をとっさに握ったので、はっきりした記憶ではないが、と前置きしつつ、ハンマーの形をした部分で殴ったという。

解剖結果による頭部外傷の傷口と矛盾もなかった。

犯人であるとの立証は十分だとして公判請求することにした。

次席検事、検事正の起訴決裁でも特に問題点を指定されることはなかった。
 

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『ヤメ検・丹前健の事件録 ―語られなかった「真相」の行方―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。