「あ、そうね、実は、和華子さんのおばあさんがちょうど私の家の裏にお一人で住んでいらっしゃったの。そのおばあさんが入院されることになったんで、お孫さんの和華子さんがそのお世話をしに京都から来られて、暫くそのおばあさんの家で泊まられていたのよ。それが私たちが小学校六年生の時で、和華子さんとの出会いのきっかけ」

橘子が話しだすと、紀理子さんも興味深そうな眼になった。

「この葉書きにもおばあさんのことちょっと書いてあったはずよ。あ、言っとくけど、私もほとんどおなじ内容の絵葉書を和華子さんから貰ってるの」

「え、橘子さんも?」

紀理子さんは少しおどろいた。

「だって、二人ともおなじように和華子さんとなかよくしていたもの。絵葉書が届いた時、お互いに見せっこしたから、内容も知ってる。もう九年も前だけど、和華子さんからのだから今もよくおぼえてるわ。和華子さんが来られて一ヵ月程して、結局おばあさん転院することになって、娘さん─和華子さんのおかあさんなんだけど─が京都におられるから、そこのおおきな病院に移られたの。和華子さんもその時一緒に京都へかえられた。その後にこの葉書きをくださったの。

ちょうど京都は五山の送り火の季節だったから、その絵柄の絵葉書だったんじゃないかしら。私はそうおぼえてるけど、清躬くんのも送り火の絵柄だったでしょ?」

紀理子さんは「ええ」と小さくうなづいた。
 

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『相生 上 』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。