自分たちは、いま決められたことだけをやっていれば良いと思う人が多ければ多いほど、ノウハウは、日々見過ごされていく。効率化を重視して、分業が進んでいく代わりに、もっと効率の良いアイデアや、ノウハウを形式知にする工夫への興味は薄れていく。

専門性やスキルは人が高めることができる最も重要な武器であり、ノウハウは、その武器の効果を何倍にも変えるヒントになるのである。

スタイル・社風(Style)

その組織での活動に関しての意思決定や文化的な側面を表している区分である。

トップダウン・ボトムアップという言葉がある。多くのビジネス本では、トップダウンとボトムアップのことなどがStyleのセクションで取り上げられている。

私は、このトップダウン・ボトムアップどちらにも否定的である。差別的なものを感じる。コンサルティングという商売柄、意図的にあえて否定的な側面から入ることがあるわけだが、組織の仕組みとしては、どちらも重要であり、どちらも活発な方が健全だと考えているからである。

だいたいどちらも、お互いのやっていることを無視して、罪を擦りつけあうような悪い意味で使われることが多いと思うわけであるが、自分たちの組織ではどうであろうか?

私は、ボトムがどうとかトップがどうということではなく、組織を構成するメンバーのリーダーシップがどう発揮されやすい構造になっているのか? という切り口で考えるようにしている。

私は、究極のスタイルは、組織を構成するメンバーすべてが、リーダーシップを発揮できる文化だと考えている。

誰でも気づいたらアイデアを挙げられる場所。倫理的に社会の視点から「おかしいな?」と思ったらすぐに相談できる場所(報復されないような配慮が必要)。忖度のない世界。

これは誰が作り、誰が導入するべきなのか。あなたには百年早いとか、出過ぎた真似をするなとか。

念のために上司にお伺いを立ててみるとか、だいたい上司って何をする役目なのだろうか。本当は組織を効率化するための仕組みで中間管理職を置いているはずなのである。それがリソースや時間の無駄遣いにつながる要因になることもある。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『管理職魂』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。