枝は想像通りの太さで、とても握りやすく想像していたブローチの理想の円周そのものだった。

やっと制作に移れる。僕はついに材料を手に入れた安堵と、アパートまで二時間半歩いた疲れで、夕方なのに何も食べもしないでベッドに倒れ込んで眠った。

睡眠障害の僕だけど、最近はしっかり眠れるようになっていた。

もし寝たら忘れてしまうシステムだったら、寝て葉月さんを思い出すこともあるかもしれない。

虚言癖だの、中二病だの言われるけど、僕の記憶は本物だ。天からうけた才能だ。

イレギュラーは起きたけど、城間さんの顔を覚えたい。あの品のある笑い声と一緒の笑顔を想いながら、思い出せない顔を想像しながら眠りについた。
 

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『100点をとれない天才の恋』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。