決してこわいわけじゃない、銀行と上手に付き合う方法

このバブル期の経験は、銀行と上手に付き合っていくための方法を見出すきっかけになった。

まず認識しなければならないのは、支店長も行員もサラリーマンであることだ。

本部があり支店がある縦構造の組織で成果を挙げるべく仕事をするわけだが、減点主義の人事評価が存在するという現実があり、失敗すれば出世に響く。誰もがこれを恐れるのでどうしても安全運転になるのである。

支店では支店長の権限は絶対で、貸付に関しては支店長の決裁がなければ副支店長も課長も動かない。さらに最近では本部による統制が強く、その支店長の権限さえ裁量が限られている。したがって、冒険ができず守りのマネジメントになっているのである。

資金を融資する場合、金融機関は「使途の目的が的確であるか」「決算書によるBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)が適正であるか」「経営者のビジョン及び経営計画は的確であるか」などをチェックして返済能力があるかどうかを見る。

借りる方はほとんど流動資金が少ない状態で融資を受けるので、借りた資金をどのように使って再生産に結び付けるのか、またどのように返済していくのか、そのあたりの返済計画を明確にし、担当者を通して支店長を上手く説得しなければならない。

実際は、資金と資産の裏付けがあるところには貸して、資金が必要なところには貸さない傾向があるため銀行から借入れをするのは大変である。ただし、銀行も保証会社を通せば借りやすく利用価値はある。日本政策金融公庫、信用金庫や保険会社は大手銀行より審査が緩いので、やはり担当者を通じて交渉すべきと考える。

現在の金融情勢は、デフレで生産過剰である。したがって企業が設備投資を控えているために金融機関は金余り状態が続いており、貸出し金利もかなり下がっている。そのような状況においては、自社の流動資金は潤沢であったとしても、借りる能力があるのなら将来を見据えて固定金利で今のうちに資金を調達するのも良いかもしれない。

最終的に注意したいことは、担当者がOKして商談が進んでいても支店長が確認しているかを確かめる必要がある。担当者と支店長の齟齬によって、話がひっくり返り破談となるケースもある。実際に私はこのケースで痛い目に遭っている。

ついでに株の投資の話をすると、私や中小企業の経営者の人たちの経験から、株の投資で一時は儲かってもほとんど損をしていて、競馬や競輪の賭け事と同じであると言える。

確かに、株の投資は新聞を読んだり情報を集めたりして経済の勉強にはなる。

だから、「損しても自業自得なので仕方がない」と軽く思える程度にしなければならない。特に証券マンは手数料を稼ぐのが仕事だから、投資家に先行き得するといった切り口で勧誘してくるが、彼らは損をさせても責任は取らず、すべては投資家の責任になる。

バブルが崩壊した時、またリーマンショックの時に株の暴落で会社の倒産と個人破産が戦後最も多かったことが記憶に残っている人は多いと思う。有名な経済評論家でさえ株の暴落を予想できる人はいなかった。今後も株価は日本だけでなく世界の景気と国際情勢にリンクしているので、先行きの株価を予想するのはますます難しくなるのは間違いない。そのくらい株の投資は難しいのである。

そう言う私も株では大損している一人である。金儲けは仕事で成功する以外はないと思っていて間違いない。
 

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『復活経営 起業して50年 諦めないから今がある』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。