宇宙船の建造には10基のシャトルを作る必要がある。

8基は宇宙船のメインエンジンとなり、あとの2機は予備として緊急脱出用や惑星着陸用に搭載する計画とした。

宇宙船の製作のほとんどはロボットが行なうので、このシャトルは資材を地上から宇宙に運ぶ運搬船の役割を担うことになる。

宇宙船の本体が完成すると、このシャトルは本体と合体してその広い貨物室が酸素と水素の燃料タンク室として使われる。

堀内は、エンジンの開発と並行して宇宙船の開発も行なわなくてはならない。

コンピューターの研究をしている伊藤に、自分の基本構想を設計図に落とし込んでくれるコンピューターの開発を依頼していた。

堀内は、「伊藤さん、宇宙船の基本設計は作ったのですが、詳細設計は私1人ではとても書くことができません。四国の田舎に設計士を何百人も集めて図面を1枚1枚作ることはとてもできないことです。伊藤さんが開発したコンピューターに詳細設計を引かせることはできないでしょうか」と相談した。

伊藤は、「まだ完成の段階ではありませんが、やらせてみましょう」と軽く答えた。

伊藤には確証はなかったが、何となくやれるのではないかと感じるものがあった。

堀内が、「この前本多先生と仮面ライダーのようなものを被って実験したやつですか」

「そうそう、その仮面ライダーのコンピューターです」
 

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『U リターン』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。