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沢井一道さわいかずみちは気にかけている

姉の家族は母と話して、お互いの今日のことを情報交換すると、ただ労わりあった。

「こんな格好で、病院に、申し訳ない」

とヒョウゴ、イオリが口々に言った。みな、幸三のことは心配だが、処置中でいつ会えるかわからないので、とりあえず翌日のこともあり、姉一家は自宅に戻ることにした。

「おばあちゃんをお願いします。頼りにしていたサクラのことでも、心を痛めていると思うから」

「大丈夫、ちょっと長めに滞在する予定だから」

その後、幸三が三日間入院し、さらに退院後、すぐに通っている施設でショートステイの受け入れもしてくれるというので、姉にも連絡し、せめて父が退院するまで杜都市に滞在することにした。

翌日曜日。夜に姉・明純に電話してみた。その日もみつからなかったことは、母から話はきいていた。また、ヒョウゴ、イオリも夕方関東に帰ったそうだった。サクラがいなくなって姉とちゃんと話すのは初めてだった。

姉は今までの五日間の捜索内容を事細かに説明してくれた。そして、今日、どうしても気になる左衛門小屋に山岳捜索隊とイオリが行ったこと。他に出てくれた捜索隊も、かなり危ない場所まで捜してくれたがみつからなかったこと。また、サクラの職場の人の紹介でドローンの会社が来たが、ヘリコプターと一緒に飛べず、場所が限定できない状態で武蔵山脈の一部分の写真・映像を撮ってもらったが、草木が生い茂りすぎてまったく見えなかったこと。そして良典が運転して、ついにサクラの車を引き取って来たことを聞いた。