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東京都立広尾病院事件東京地裁判決

D医師は、Aの死体を検案して異状があると認めた医師として、警察への届出義務を有するものであるが、対策会議において、警察に届け出るか否かについては、J副院長が医師法の話をしていたのを聞いており、本件が看護師の絡んだ医療過誤であるので、個人的に届け出ようとは思わず、都立広尾病院としての対処に委ねており、被告人も、この点については、対策会議を招集して協議し、都立広尾病院として対処することとし、誤薬投与の可能性を熟知しながら、

J副院長の「医師法の規定からしても、事故の疑いがあるのなら、届け出るべきでしょう」との発言を始め、

他の出席者も「やはり、仕方がないですね。警察に届けましょう」との意見を表明したことから、

医師法の規定を意識した上での警察への届出を決定しながら、

病院事業部から「これまで都立病院から警察に事故の届け出を出したことがないし、詳しい事情も分からないから、今からすぐに職員を院の方に行かせる」旨の連絡を受けて、

被告人を始めとする対策会議の出席者は、最終結論は、病院事業部の職員が都立広尾病院に来てから直接その話を聞いてきめることとし、それまで警察への届け出は保留することに決定することによって、医師法第21条にいう24時間以内に警察に届出をしなかったことが認められるのであるから、被告人は、死体を検案して異状があると認めたD医師らと共謀して、医師法第21条違反の罪を犯したものと認めるのが相当である。

もっとも、弁護人は、D医師が死亡を確認したころには、Aの右腕に異常着色は現れていなかったと言うが、Aの救命措置にあたっていたF看護師、○○看護師、××看護師らは、救命措置の最中にAの右腕に異常着色が現れていた旨供述しており、また、D医師自身も、心臓マッサージを施している際、Aの右腕には色素沈着のような状態があることに気付いていた旨供述していること(検察官調書謄本)などにかんがみれば、D医師がAの死亡を確認した際、既に異常着色が現れていたと認めるのが相当であり、弁護人の主張は失当である。

なお、弁護人はD医師は医師法第21条にいう死体の検案をしたことにはならないかのようにいうが、AはD医師が主治医として診療してきた入院患者であり、D医師は、Aの容態が急変して死亡し、その死亡について誤薬投与の可能性があり、診療中の傷病等とは別の原因で死亡した疑いがあった状況のもとで、それまでの診療経過により把握していた情報、急変の経過についてE医師から説明を受けた内容、自身が蘇生措置の際などに目にしたAの右腕の色素沈着などの事情を知った上で、心筋梗塞や薬物死の可能性も考え、死亡原因は不明であるとの判断をして、遺族に病理解剖の申し出をしているのであるから、Aの死体検案をしたものというべきであって、弁護人の主張は失当である。