人事評価は何のためにあるのかを知る

会社組織の中で働いている社員は、誰でも、自分がどのように「評価」されているのかを、気にしながら仕事をしています。

多くの人にとって、「己の評価」が最大の関心事といっても過言ではありません。良い評価を得て、昇給、昇格し、出世することを目標に、日々の業務に励んでいます。

ひと昔前ですと、立身出世を目指す、企業戦士のイメージもありました。栄養ドリンクのコマーシャルにあった、「あなたは24時間戦えますか?」というインパクトのある、キャッチフレーズが思い出されます。

最近では、時代の変化とともに、ワークライフバランスを重要視する傾向も、見受けられます。仕事と生活のバランスを見直すことは、実に大切だと思います。

特に、日本の場合、いまだに「オン」と「オフ」の切り替えがうまくできない職場も多いので、この流れが、更に発展することを期待しています。それでも、自分が会社から「どのように評価されているか」に無頓着な従業員は、おそらくいないのではないかと思います。

人事評価の意味を要約すると、「社員に対して、仕事の成果に対する公正な処遇を行い、働く意欲を向上させる」ということになります。

会社は、業績の向上を目標として、従業員に少しでも良い成果を挙げてもらうために、様々な人事制度を設計します。加えて、「従業員満足度の向上」や、「評価の公平性」を追求しながら、少しでも効果のある、良い仕組みを構築しようとします。

その根幹を成すのが、人事評価の基準を定める「評価制度」と、階層や役職を規定する「等級制度」、及び、給与等を定める「報酬制度」です。この3つを、バランス良く連動させながら、効果的な制度設計を行うことになります。

しかし、本質的なところでは、所定の利益を挙げるために、全社員がやる気を持って、仕事に取り組めるような制度を作ることになります。必然的に、「ひとつでも上を目指す」仕組みとなって表れ、往々にして、席の配置など、目に見える形でも表れます。

会社にもよるでしょうが、部長や課長になると、机の向きが反対になって、部下を見渡す形になります。また、役員になると、個室があてがわれる場合もあります。外資系の場合、ディレクタークラスは、ほぼ間違いなく個室となります。

また、日系の会社では、役員専用のお抱え運転手がつくケースもあります(最近は減ってきたと聞いていますが)。新幹線のグリーン席や、飛行機のファーストクラスが使用できるのも、分かりやすい「特権」であると言えます。以前、日系企業で役員とふたりきりで出張した際には、お供としてグリーン席に座らされたこともありました。

施策は、肩書にも表れます。事業部長や本部長にはなれなくても、「副事業部長」とか「副本部長」のように、「副○○長」といった職責を用意することで、少しでも多くの社員が出世した気分を味わえるよう、工夫を凝らします(日系企業でよく見かけます)。

名刺に入る「肩書」に至っては、もっといい加減で、時には、本来とは違う職責を表記することもあります。人事制度上は、課長職でなくても、社外的な効果も兼ねて、「担当課長」のような肩書を用意する場合が、相当するのではないでしょうか(このケースは、外資系企業にも散見します)。

以上のように、会社には、社員の「出世意欲をあおる」ことで、業績向上を図ろうとする一面があり、人事制度も、有効な手段として活用されることになります。働く側からすると、「昇給、昇格して偉くなって、社内でも注目される存在になりたい」という潜在意識が刺激されるので、つい人事制度の仕組みの中で踊ってしまいます。

ところが、上に行けば行くほど、ポストの数は減ります。全員が、仲良く出世できるはずはありません。いつか、どこかで、誰かがふるいにかけられて、「出世レース」から脱落することになります。実際、多くの会社員は、自分がふるいにかけられるまで、事実を意識することはありません。

大半の社員は、「まさか自分に限って、そんな目に遭うはずはない」と信じて仕事をしています。また、そう信じていないと、仕事も前向きにできません。しかし、この事実は、会社という組織の中にいる限り、避けて通れない現実でもあります。