一方、私が一緒に仕事をしていた連中は口を揃えて「専門性が最も重要」だと言う。専門家としても評価される仕組みを持っている組織が多いせいか、何も管理職になんかならなくてもエキスパートラダーを登っていけばサラリーは増えていく。好きでもないのに、得意でもないのに無理矢理にでも管理職を目指す必要はないのかもしれない。

私のいた日本の組織にはエキスパートラダーはなかった。ある一定の年齢になると、なんとなく管理職を目指すことになる。目指さないといけないような雰囲気を感じる。もちろんこれが嫌な人もいるわけであるが、本人の気持ちとは裏腹に管理職を目指すことを推奨したり、もしかしたら強要している場面もあるのかもしれない。

このような状況はもしかしたら人の能力を伸ばすことの障害になるかもしれないと、帰国後に強く思うようになった。グローバル人材には「異文化コミュニケーションスキルが重要」だという日本人的感覚満載で、盛んに議論しているが、海外組織の第一線で活動した経験に乏しい人達で、神格化された人材像を創り上げることに何の意味も感じない。企業を対象にアンケートをとったりしているが、そもそも英語や文化の問題ではなく、固定観念や問題すり替えのマインドの問題なのだと思う。自ら作り出した壁で自ら怪我をするといったところか。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『管理職魂』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。