その笑顔を見るたびに日本人に桜は特別なのだなぁと思います。

中庭の桜を囲んで行ったお花見パーティー。(巻頭P.v)
住宅正面の花壇。(巻頭P.v)

庭づくりは正面、中庭、裏庭、菜園の4箇所になりました。正面と中庭の花壇は、開業当初に札幌国際大学の教員をされていた平林さんご夫妻と城座先生がボランティアで植栽してくれました。

平林さんは父が医院を営んでいた時からの患者さんで、その頃から無償で植栽や認知症園芸療法をしてくれました。正面のマリーゴールドや中庭の水仙、ワイルドベリーは先生方からいただいたものです。

四季が楽しめるように、植栽に多くの工夫をしました。まず、冬を除き、年中、花が見られるようにしました。春はレンギョウから始まり、芍薬、桜、ボタン、つつじやライラック、野山の花々がいずれかの庭で咲き誇ります。

そして藤とルピナス、バラが初夏にいい香りを放ちます。夏は北側の裏庭に多くの菊が咲き、中庭にはむくげが咲きます。中庭の園路の終わり、住宅の対角には江別市在住のモザイクタイルアートで有名な芸術家、原田ミドーさんにバラのベンチを2年もかけて作ってもらいました。

そのベンチは野ばら、はまなす、各種の香りのいいバラに囲まれており、6月中旬から7月には最高の芳香に包まれ、入居者さんに大人気のスペースになりました。

芸術も人の感性を刺激する大事な仕掛けです。私にとっても特別な居場所となりました。そこに座れば、訪れたバルセロナのグエル公園での思い出や、美しいヨーロッパの景色が思い出されるのです。

花の散る秋には、紅葉や果実を楽しめます。紅葉を楽しめるように、ドウダンツツジ、ニシキギ、ヤマモミジ、ヤマボウシ、楓を配置、中央の桜も紅葉してくれました。

さらに、植えて5年経ってようやくリンゴが実を付けるようになりました。それを入居者さんが毎日観察し、日々実が何個膨らんできたとか、落ちてしまったとか、いよいよ紅くなって大きくなってきたとか、楽しそうに教えてくれました。花のあとにリンゴの赤い実が、見事に入居者さんを魅了してくれたのです。

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『安らぎのある終の住処づくりをめざして』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。