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外部環境

『縁側、中庭、庭、施設の周辺、施設外の環境も重要な刺激です。小鳥のさえずり、木漏れ日、風の音、緑の香り、雨上がりの土のにおい、五感に働きかけ、感情をそっと揺り動かすような刺激が建物の外にはたくさんあります。建物の中で完結しない生活のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。

日向ぼっこをする場所一つでも、生活に広がりをもたらします。地域の方との交流の機会など、社会的な刺激も積極的に取り入れている例もあります』

これこれ! 私がスウェーデンで放浪中に感じていたことはこれなんです。スウェーデンではまだ40歳代だというのにたっぷりと自由時間をいただき、この期間にいろいろなことを考えることができました。

時間がたっぷりあると、ふと自然の営み、空気、そして自然環境や外部環境の持つ力に気がつけるのです。これは本当にまとまった長期の自由時間がないと気づかなかったことだと思います。

最近、帰国後は忙殺されてなかなか自由思考の時間が取れなくなって、自然が目に映らなくなったのが悩みです。そんな時、「美しが丘」の庭を訪問診療の後に散歩し、美しい庭に没入しながら思考を育てています。

「美しが丘」の立地にこだわったのは、高齢者の終の住処には、このような外部環境の重要性があるからです。人との交流を遮断されず、かつ、閑静な環境を求め、町の近くにある住宅街にその地はありました。

さらに目の前には古くからあるモモセ乗馬場、この森があるおかげで、室内から見た景色は森の中にいるようです。さらにさらに、その正面の通り道は児童の通学路です。

そこを朝に夕に子供達が通っていく風景、それを歳をとった自分が毎日眺めた時、どんなことを思うでしょうか?

恐らくは自分の子供時代や、息子の学生時代など様々な思い出が巡るはずです。子供達を見ていられるだけでも素晴らしい刺激になるはずです。人間は動けなくなっても五感があり、それを刺激する環境作りに庭は重要だと考えました。

視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を刺激する庭づくりにこだわりました。

住宅の前を通学する学生達。(巻頭P.iv)

五感をくすぐる庭園のはなし

中庭の中心部にはその地に自生していた八重桜を移植しました。

かなり痛んでいましたが、見事に咲いてくれました。中庭を取り囲む居室からは毎年5月の第3週ごろに満開の桜を眺めることができます。桜が咲くたびに皆さん、大喜びしてくれます。

訪問に行くと「先生、見てください、きれいな桜!」と自室の窓から独り占めできる桜の景色を見せてくれます。