本です。否、本が足りなかったのではなく、3冊ではなく4冊にしなかった私の思慮が不足していたのでした。

帰路に就く前日には3冊目を3分の2ほどまで読破して、本当ならもう少し読めたものを、翌日のことを考えて意図的に読み渋ったのでした。両津港から新潟港までのジェット・フォイル(高速船)での1時間分を、やりくりしたというわけです。

再びひとりで旅路に就いた私は、ジェット・フォイル船内で3冊目を読み終わり、新潟駅近くの本屋で帰りの新幹線で読む分を購入するという作戦を練ります。

駅に程近いビルの1階部分の一隅を利用した個人経営らしい書店で、店内を10分ほど物色したでしょうか、これぞという本がなかなかみつからず、焦りました。

しかし、文庫棚の一角に、私の趣味に合う1冊が目に留まったのです。しかも、500円という安さです。新潟~東京間2時間の『マックス』の旅は、弁当を食した後、花が添えられたようで明るく華やかで、豊かでした。

あまりにも速く、トンネルも多く、列車での旅は時間が短縮された分中身が軽薄になったようにも思えます。本当は「ジェット」ではなく「フェリー」に乗りたい気さえあったのです。

本は旅の道連れでありよき友です。行く先々、旅先や果てで、たまたま買い求めた本も、私にとってはいい土産になってくれるのも、また味があります。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『旅のかたち 彩りの日本巡礼』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。