本記事では、「医療事故調査制度の基本理念・骨格」についての見解を記載したが、その他の部分は推敲され、最終的に、日本医療法人協会医療事故調運用ガイドライン作成委員会編「医療事故調運用ガイドライン」として出版(へるす出版)に至っているので、「医療事故調査制度に関する見解」の内容については割愛することとした。

*医師法第21条は、警察への「届出」である。一方、医療事故調査制度では、「届出」ではなく、「報告」である。本稿で、「報告」であるべきところが、「届け」となっている部分があるが、これは厚労省の提示内容が「届け」と記載されていたため、そのまま記載した。医師法第21条は「届出」であり、医療事故調査制度は「報告」であることを追記しておきたい。

医療事故の定義をめぐる攻防、ポンチ絵の変遷

厚労省医政局長の私的検討会として設置された「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(以下「施行に係る検討会」という)で医療事故調査制度の骨格が議論された。

2015年(平成27年)3月20日に施行に係る検討会とりまとめの「医療事故調査制度の施行に係る検討について」が発表され、これがそのまま省令・告示・通知となり、医療事故調査制度が施行されることとなる。

この「施行に係る検討会」の議論に多くの答えが含まれているので議事録を要約して記載したいが、その前に、この議論での最重要部分である、医療法第6条の10医療事故の定義についての部分と、医療法第6条の16医療事故調査・支援センター(以下センターという)業務の部分について添付されたポンチ絵を基に、厚労省担当者との綱引きの概要を記しておきたい。

また、センターと支援団体の役割分担についても重要な修正があったので、この項で記載しておく。医療事故の定義部分は、医療事故調査制度の根幹部分であり、ポンチ絵が全貌を表している。

日本医療法人協会医療事故調ガイドライン(現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会最終報告)と本項のポンチ絵の推移を念頭に検討会議事録概要をお読みいただきたい。

まず、センター業務の修正部分及びセンターと支援団体の役割部分の修正につき述べた後に、最重要課題である医療事故の定義の推移につき詳述したい。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。