図11、図12によれば、大企業では、業種を問わずほとんどの企業が、テレワークを実施しました。オンライン環境が整っていない中小企業でも半数の企業が実施しました。日本全国で、テレワークという「壮大な実験」を行ったことになります。パンデミックのような大規模な災害が起こった場合、企業活動の手段はオンライン活動しかありません。今後、大規模地震、大洪水、巨大台風などの発生が頻繁に起こる時代になりましたので、今回の全国規模の「壮大な実験」を行ったことは大きな意義があります。

つまり、これまで災害で社会が麻痺したとき、果たしてテレワークがどのくらい機能するのかということは誰にもわかりませんでした。IT系の一部の企業のみが、テレワークにチャレンジしていただけで、社会全体で実施したときにどのようなことになるのか全くわかりませんでした。今回の「社会実験」で概要が浮かび上がったのです。結果が図13にあります。

 

テレワークを体験し、今後もテレワークを行いたいと答えた企業が24.3%、どちらかといえばそう思うと答えた企業が38・4%。テレワークが使えると考えた企業が、62.7%に達したのです。社会的な実験として、過半数が今後もテレワークを使いたいと考えることによって、新しい社会に向かって企業が大きく踏み出すことになるでしょう。

 

図14によれば、実際にテレワークを活用するために、企業活動に積極的に取り入れていく計画があるのかについて、企業は54.7%が拡大すると答えています。よい印象を受けただけではなく、行動に入ろうとしています。

図13「今後もテレワークを行いたい?」で「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」が合計37.3%ありました。これらの企業では課題があると感じたようです。

 

図15「テレワークの課題(仕事の効率)」について尋ねたところ、「やや下がった」、「下がった」の合計が66.2%ありました。今後、テレワークを拡大していきたいと考える企業は、過半数を超えているものの、仕事の効率が下がったと答える企業が多く、テレワークの課題も認識できたようです。

理由を見ますと、

・職場でしか閲覧できない資料のネット上での共有化
・Wi -Fiなど通信環境の整備
・部屋や机などの環境整備
・情報セキュリティ対策
・決済のデジタル化を進める

など、これまでの仕事の仕方、インフラに課題があると感じたようです。

(社員)
・家庭の出費が増えた
・小さい子がいると集中できない

(管理職)
・仕事をどう評価したらいいか
・新入社員や若手の育成が難しい
・チームワークには顔を合わせることも必要
(出典:「定着するか?テレワーク」NHK2020年6月2日)

また、通勤時間の負担は大きく減ったものの、在宅勤務をすることで、水道光熱費などの家庭の負担が増え、また、小さな子どもを抱えた家庭では、オンライン会議をしているときに子どもの姿が映ったり、声で会議が遮られたりという課題が出ました。さらに管理職としては、画面の向こう側の社員をどのように管理するのか、戸惑いがあります。離れたところで、どのように部下を教育するのかといった課題も感じたようです。

これらの「実験結果」からわかることは、テレワークに消極的な企業の課題が、ほとんど克服できるものばかりだということです。したがって、オンライン社会は広く社会に浸透していくことは間違いないようです。
 

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。