大前提として、教師と保護者は、立場は違っても、「子どもを幸せにしたい」という最終目的は同じなので、仲間なのです。だから手を取り合って協力すべきですし、たくさん話せばわかり合えないはずはないのです。

教師と保護者が子どもを育てる仲間になるために必要なことは、「保護者の立場に立って考える」という視点です。

子育てに正解はないですし、やり直しもききません。教師は毎年新入生が入ってきて、前年度にうまくいかなかったことを改善できますが、保護者は今まで経験のないことを、わが子でぶっつけ本番の一発勝負なのです。

不安を抱えながら、悩みながら、毎日子育てに奮闘していることを、教師は絶対に忘れてはいけません(私の教師一年目の教育など、知識も技術もなく、未熟で、反省ばかりです)。

以前保護者会のときに、「すみません……」と謝りながら教室に入ってくる保護者がいました。私はすかさず、

「何が『すみません』なんですか。お子さん、めちゃくちゃいい子ですよ。具体的にはですね……」

と返しました。すると、

「本当にありがとうございます。うちの子が学校でそんなにがんばっていると思いませんでした。そんな面もあるんですね。家ではだらしなくて……。今日は、もういろいろ言われる覚悟で来たので、本当に嬉しいです」

と言われたことがあります。

確かに、中には、提出物が出なかったり、忘れ物が多かったりと、だらしない子もいます。きっと今までの保護者会でも、そのことを指摘されて謝り続けてきたか、いつもわが子が学校で迷惑をかけてしまっていると思っているのでしょう。

ここで大切なのは、わが子にだらしない面があることくらい、親が一番よくわかっているということです。それを鬼の首をとったかのような態度で指摘しても改善されません。保護者と子どもを追い詰めるだけです。例え教師の指摘に親が同調してもぐちぐち言ってはいけません。

「そうなんですよ先生。本当にうちの子出来が悪いですよね」

と言っていたって、自分の子どものよくないところばかりを挙げられて嬉しい保護者はいないということを知るべきです。

もちろん、改善されればその子のためになることは事実を正確に伝えるべきですし、具体的な改善策を出すことも大切ですが、家で見ているだけでは気づくことのできない子どもの長所を伝えることも、保護者会における教師の役割でしょう。
 

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『教師は学校をあきらめない! 子どもたちを幸せにする教育哲学』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。