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道徳授業地区公開講座でのこと──『臨床教育学研究室紀要』寄稿論文より

この年、私の学校は道徳授業地区公開講座を開催すべく教育委員会より指定を受けていた。そのため、私は学級担任をしていた3年生の道徳の授業を公開で行った。単元は奉仕の精神に決め、教材は星野富弘の詩画集『鈴の鳴る道』(偕成社 1986年)のうちの一編の詩「雨」を選択し、学習指導案を作成して準備を進めた。

公開講座当日は、町の教育長を始め、近隣の小中学校の教師や、また、地域の民生委員など多数の人が授業参観に訪れた。

「雨」

星野富弘

じゃがいも畑の横の道を

その子は 後をつけてきた

麦畑をすぎ

墓場の角をまがっても

桃色のスカートを揺らせ

心配そうに ついてきた

「ありがとう」

家のそばで 私がいうと

その子は 黙って

帰って行った

くるま椅子で

雨に降られた日のこと

詩を読んだ後で、いかに星野富弘が寝たきりの状態で筆を口にくわえて絵を描き、詩を詠んでいるのかをテレビの特集番組を録画したものを映像で流した。そして、3人の生徒それぞれに詩を音読させた後、次のように発問をした。

「この女の子は何歳ぐらいだと思うか?」

「なぜこの女の子は星野さんの後をついていったのだろうか? この時の気持ちはどんなだっただろうか?」

「星野さんが家まで辿り着き、『ありがとう』と言われた時、この子はどんな気持ちだっただろうか?」

などなど、どの質問に対しても、3人の生徒は模範解答を示してくれた。

「小学校1~2年生かなぁ」

「星野さんが車椅子なので心配でついていった」

「家まで無事に着いたので、ホッと安心して帰った。『ありがとう』と言われてうれしかった」

そして、無難に授業を終えることができ、その後、研究協議会が開かれた。