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もう一度かあさんの聲が聴きたい【最終回】
いまだから、いまになってから、思い出すあの眼差し、あの温もり
いまだから、いまになってから、叶わないことだけど、ただ願う――
母という存在をなくして、心は声なき言葉を語りだす。
失ってから、ふたたび得る。ひとすじの救済への過程。
「かあさん、ありがとう」
第21回 日本自費出版文化賞「詩歌部門賞」受賞作品を連載でお届けします。
いまだから、いまになってから、思い出すあの眼差し、あの温もり。いまだから、いまになってから、叶わないことだけど、ただ願う――法邑美智子氏の著書『もう一度かあさんの聲が聴きたい』（幻冬舎ルネッサンス新社）より一部を抜粋し、母という存在を失ってからふたたび得る、ひとすじの救済への過程を描きます。
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今 六十六歳の自分の最期を考える時
かあさんのように死にたい
死にかたまでも教えていった あなたは…かあさん
すごいかあさんでした
自分の生き方を最後までつらぬいたかあさん
あなたは…かあさん
私たち姉弟の見本です父は八十歳近くから
何度も脳梗塞でたおれた
最後にたおれた時には体の半分がこわれ
寝たきりになり入院
かあさんはその時八十五歳
四年もの間 朝晩 一日二回 杖をつきつき
ごはんを食べさせに行っていた
一口一口 毎日毎日
雨の日も風の日も とうさんのそばへ
衰弱していき 胃ろうの話がでた時
毅然として
「とうさんの延命治療はいらぬ」と言ったかあさん
