しかし、まだまだ問題がありました。一か月の新幹線の定期代でした。夫に協力してもらっていても、この出費をなんとか工面する方法を考えようと案を練りました。

そこで、ひらめきました。産休明けまでの日課として、在宅でできるイラストの仕事を朝刊の求人広告欄で探すことでした。幸い、その数日後に、近刊予定の求人広告雑誌でイラストレーター募集の記事を見つけました。

一点1000円のイラストを月に100点描いて、月末に納品するという仕事です。教師をしている私にとって、描く量が多いことは大変でしたが、このチャンスを逃すわけにはいかないと決めました。

このチャンスには実技の試験がありました。採用面接当日、帰宅していた夫に子供たちを預かってもらい、ロットリングペンと何枚かのスクリーントーンを持参し、会場へ乗り込みました。

決められたテーマのイラストを、5つのタッチで描き上げる30分以内のテストでしたが、早いのが取り柄の私は、15分で5つのイラストを描き上げ提出。

100人いた応募者の中、採用枠10名の狭き門を突破することができたのです。夫が現状を区役所に伝えてくれたおかげで、すぐに区立保育園の入園が決定し、さらには開園の時間を15分早める措置も施してもらうことができました。

産休が明け、子供たちをそれぞれの保育園に預けた後、在来線と新幹線と自転車の通勤が予定していた通りに始まりました。区の措置によって、自転車を必死でがなくても、出勤時間に間に合うことができました。

まるでトライアスロンのような一年間でしたが、子供たちがいたおかげで乗り越えることができました。必死に考えたら、必ず道は見つかると信じています。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『きょうは着物にウエスタンブーツ履いて』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。