しかし今朝の早朝ミーティングで社長から名指しで基盤部門における赤字体質の改善を命じられた。それも6カ月以内に黒字の目途を立てることであった。

山田は席に戻ると基盤製作の石川係長だけでなく、組立係長の田代、加工係長の渡辺にも集合をかけた。3人揃ったところで早朝ミーティングの概要と経過を話した。

当事者の石川は、『現状から削れるものはないか』『赤字の原因となっているものは何か』と思いを巡らせていた。すぐに思いついたのが、時間内では予定数が出来上がらず、連日残業が2~3時間、月に2回の休日出勤が常態化していることによる『超過勤務手当』が大きいのではないかということであった。しかしこれをなくすためには、生産量を減らすか、パート人員を増やすことになる。したがって、解決策にはならない。大きな溜め息とともに天井を見上げていた。渡辺や田代の両係長は直接身に及ばないことなので、まだ真剣に対策を考えるまでには至っていなかった。

山田はこのような空気になることを予測していたのか、おもむろに口を開いた。

〈山田〉今回の課題は、社長の並々ならぬ決断だった。この課題解決は製造部全体に投げかけられたものとして捉えなければならない。私も全力で取り掛かる。君たちも他人事と考えず、自分が担当することもあるという気持ちで取り組んで欲しい。次回の打合せを3日後の木曜日9月14日の17時からとするので、それまでに現状の把握、設計課、経営企画室や営業などとの話し合い、情報の収集に努め、改善の糸口を見出してほしい。とにかく今回の台風の目は、この製造部にあるんだよ。

係長3人は何をどのようにすべきか全く分からなかった。誰からともなくそれではこれから3人で工場を見に行こうという話にまとまった。今まで自分の工場についてはよく分かっていたが、他の工場のことはほとんど見たこともなく、ましてどんな作業をしているかについての興味もなかった。
 

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『企業覚醒』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。