【人気記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない

第17話 鹿屋航空基地

「おーーい、こら貴様ら、そこでなにやっている」

遠く滑走路から走ってくる兵士が二人。

「おい、アツシ起きろ」

「まだ、痛いですよ。はっ! あっ、あれは……」

アツシが震える手で指をさす。

「貴様ら……」

「なぜ、ここに」

「こ、これは、黒田技術兵長と丸一等兵! お久しぶりです」

アツシは立ち上がり敬礼する。

「鈴木二等兵よく生きていたな、広島にピカドンが落ちて心配してたんだぞ……」

アツシは16歳の少年兵に戻っていた。黒田と丸は涙ながらにアツシのいがぐり頭をなで、頬を寄せる。

「よく生きていた……よく生きていた……」

「そこにおるのは、貴様、浦じゃないか」

シマは赤ちゃんになったさくらを抱きかかえ、持っていた帯紐で背負った。

「お久しぶりです」

27歳に若返ったシマも敬礼する。

「お前の子か?」

「黒田兵長、そんなわけないですよ……」

シマが珍しく照れて黒田の肩を叩く。

「じゃ……戦争孤児か?」

「まあ、そんなところです……」

「ううっ、どうして、こんな戦争になったんだろう……」

黒田は涙目で呟いた。

第18話 神風特別攻撃隊飛ぶ

「広島の次に、長崎にも8月9日にピカドンが落ちてな……それに、この間まで我々がおった『狐の巣』も壊滅か、我々も帰るところもなくなったな……」

「本土決戦もいよいよだ……神風特攻隊も連日出撃している。我々は今不眠不休でゼロ戦の整備、修理を行っている。1機でも多く飛ばさんとな……今、『狐の巣』で培った工学の知識と技能が活きている……」


続けて黒田は現状を喋る。

「それと、日本軍の命令系統もかなり寸断されている……、ちょうどいい、猫の手も借りたいぐらいだ、
緊急応援部隊として浦上等兵と鈴木二等兵も手伝ってくれるな……上部の方には俺からすぐに報告する」

「……」

黒田は両手でシマの手を強く握り締めた、シマは無言である。

「俺も丸も、いずれ出撃するつもりだ……浦とアツシは必ず残れ……」

しまった! シマさん……粉ミルク忘れました……

わたしので、出るかな……

シマの突然の発言にアツシは顔を赤らめた。

「あんたら……夜中まで悪いな」

格納庫では、ランプを傍に置きシマとアツシが工具を手に寝そべってゼロ戦の修理をしていた。

シマとアツシが起き上がると、パイロットスーツの2人の男が立っていた。

「明日、こいつが飛び立つ、外木場そとこば学一等兵だ」

「若いな……」

「ハイ、18歳です、明日、お国のために精一杯努めてまいります」

シマ、アツシに向かって敬礼をする。

「ぼくよりちょっと上なだけなのに……」

アツシは涙をぬぐう。

外木場学……どっかで聞いたことあるような……

シマは少し考えるが思い出せないでいる。

「食堂で握り飯を作ってもらってきた、ちょっと休憩しないか」

体躯のいい上官が声をかける。

似ている……

……ホント、似てる……