相性が悪い相手に対しては、なおさらです。余談ですが、この会社の社長、損得勘定の働く人物のようで、「期待の星」もほどなく干されることになります。

相性とは直接関係ないのですが、私自身も、強い嫉妬心に取りつかれたことがあります。まだ若かりし頃、同期が自分より早く昇格した時です。それまでは、常に先を行っていたものですから、天狗になっていたのかもしれません。

嫉妬心にかられると、実によろしくない精神状態に陥ります。理屈では分かっているものの、どうしても冷静に、感情をコントロールできなくなります。

くれぐれも、用心しなければなりません。なお、嫉妬という漢字には女偏が入っていることもあり、一般的に、女性のほうが嫉妬しやすいと思われがちですが、心理学的統計によると、男性に軍配が上がるそうです。

勝ち馬に乗っても安心するな

相性が良いことを、「馬が合う」とも言います。性格や気が合う、意気投合する、といった意味合いで使われますが、もともとは、乗馬に由来する言葉です。

乗馬では、馬と乗り手の息が合わないとうまくいかないので、馬と乗り手の呼吸がぴったり合っている状態を、「馬が合う」と表現するようになったようです(参考:精選版日本国語大辞典)。

人間関係が良好で、前向きな印象を与える時によく使われる、便利な言葉でもあります。同じ「馬」を用いた表現で、「勝ち馬に乗る」という言葉もよく耳にします。有利なほうにつく、勝ったほうに味方して便乗する、力のある人の側について恩恵を受ける、などの意味で使われます(出所:デジタル大辞泉)。

こちらは、どちらかというと、あまり好ましくない時に用いるケースもあり、決して良い響きとまではいきませんが、「処世術」としては効率的で、手っ取り早く、効果てきめんな手段でもあります。

でも、実際に実行に移す時には、それなりの「覚悟」が必要となります。以前勤めていた会社で、役員と食事をしていた時の話です。お互いに転職してきた口ですので、前の会社の話題にも触れることになりました。

役員は、前の会社でもかなり上の職責まで上り詰めていましたが、所属していた派閥の長が派閥争いに負けた結果、一族郎党、皆外に出る羽目になったそうです。

この話題になると、役員は、それまでとは少し異なる、微妙に歪んだ、自嘲的な表情に変わりました。おそらく、まだそう遠くない、当時の生き残りをかけた生々しい社内抗争が、脳裏をよぎったのではないでしょうか。

馬が合えば相性良く、「勝ち馬(とおぼしきもの)」に乗ることができます。むしろ、乗せてもらっているという表現のほうが適切かもしれません。しばらくは気持ち良い、爽快な乗馬を満喫することになりますが、勝ち馬が、ゴール目前で「失速」することもあります。

もちろん、めでたくゴールインすることもあるでしょう。でも、その馬が損得勘定に長けた、とんでもない「暴れ馬」だったりすると、ゴールした瞬間に、振り落とされてしまいます。誰の側にもつかない、という選択肢もありますので、どうするかは本人次第です。しかし、勝ち馬に乗ると決めた時は、危険を察知したら降りる、あるいは、危ない目に遭っても大怪我を負わないよう、「危機管理」を怠らないようにしたほうが良いでしょう。

組織に身を置く者として、ある意味、常日頃の「自己防衛策」でもあります。

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。