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ヒップホップ・ドリンク

Bが鉄の重いドアを開ける。キッチンの前を通り過ぎ、6畳ほどの部屋に入った。部屋の扉や壁など至る所に、ラッパーたちのポスターやステッカーがベタベタと貼られている。

私を出迎えてくれたのは、おそらく等身大よりも一回りぐらい小さいと思われる、ラッパーSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)のダンボール紙でできたフィギュアだった。

Snoopは顔半分が隠れるほどの大きなサングラスをかけている。ダイヤがちりばめられた縁が、ギラギラと光る。窓側にはデスクがぴったりと設置されており、その上にはテレビとBoom Box(ラジカセ)が置かれている。

壁側にはベッド。大きな椅子が2つ、部屋の真ん中に無雑作に置かれている。Bの従兄弟と、マイク・タイソン似の彼はそれぞれ椅子に座り、私とBはベッドに腰をかけた。ベッドの頭上にある棚には、CDが几帳面にたくさん積み上げられている。
 

その中には、超有名アーティストらとともに制作されたBの作品も含まれている。Bはその中から一つCDを取り出し、Boom Boxにセットした。Ludacris(ルダクリス)のクレイジーで、型破りなスタイルがBは大好きなようだ。

ラッパーLudaは、Thugな男たちの気持ちをユーモラスにRepresent(代弁)してくれる。Ludaは、犯罪や女性のことばかりをラップするラッパーたちとは、どこか違うように思える。

ふと思ったことや感じたこと、日々の生活や、自分の生まれ育ったHoodについて、Ludaはテンポ良く喋る。彼のラップは暗さとは無縁で、悲しみや怒りも笑いに変えてしまう。

私たちはThug Passionを飲みながら、Ludaのラップに合わせて大合唱。途中ビートに合わせ、BがFreestyle(フリースタイル)でラップを始めた。

従兄弟がそれに続く。Bの口からは、気が付けばラップが聞こえてくる。Bはふと頭に浮かんだフレーズやライムをつねにメモしておく。Bは言う。

「オレ、Jay-Zをリスペクトしてんだ。だってJay-Zはリリックをすべて頭でおぼえる。オレにはまだ無理だな」。

ドンドンドン。誰かがドアを強く叩いている。