第二章 抱きしめたい

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山岸明日香とは二年生も同じクラスになった。そして偶然にも又席が隣になった。

「あら滝沢君。又、隣ですね、何かの縁ですよね」

「不思議だね、僕の横はいや?」

「私は、嬉しい。でも誰か、やきもちを焼いている人はいませんか?」

「そんな人は誰もいないよ」

彼女は、僕を見ながら少し意味ありげに笑った。

二年生になると、いろいろと忙しくなった。クラブ活動も活発になって来た。僕は地味な化学部に所属した。

陸上部で、小学校の時に同じクラスだった河北南海子が活躍していた。グランドで、ランニングをしている彼女を見かけると暫く見とれていた。河北も身長が伸びた様だ。でもそれは小学校の時に同じクラスだった関係だけだ。

華岡は英会話部に入っていた。彼女らしい。部員はほとんどが、女子生徒だと聞いて変な安心感を持った。

鉄平も背が伸びて、並ぶのはクラスで後ろから三番目になった。でもやっぱり華岡に対する、積極的な行動は出来ない。反対に彼女を思う気持ちは無限に大きくなった。休み時間に廊下ですれ違う時にお互い見つめあうだけで満足だった。この時間は本当に楽しい青春だった。

今年も、太陽と肉体が一つになり汗がほとばしる青春の夏が来た。夏休みの一週間前に、二年生によるクラス別の学年水泳大会が開催される。内容は一チーム四人で、二百メートルのリレー競争だ。

体育の授業で、各クラスの五十メートル上位タイム四名が参加する。鉄平も選ばれた。

鉄平は、運動関係はほとんど苦手だったが、母が子供の時に、いざという時に泳げないと困ると言って、無理やり水泳教室へ入学させられた。

何が、いざという時か、よく分からなかったが通っているうちに不思議と楽しくなった。上達してクラスが進級すると、さらに熱心なり得意になった。

いよいよ大会のその日を迎えた。学校近くの神社の森には蝉が集団で夏を謳歌していた。太陽も、これでどうだと言わんばかりに張り切っていた。

何時もは、女子がはしゃぐ明るい声が聞こえる初夏のプールだが、この日ばかりは戦いの熱い風が吹いて皆を迎えた。校舎から応援の生徒達が何組ものグループになってプールに向かって集まってきた。

※本記事は、2019年11月刊行の書籍『爽快隔世遺伝』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。