大英帝国の発展の原動力の1つが未知の世界への探検の精神でした。ですからイギリスでは今でも「探検」を口先だけでなく尊重し奨励する精神が息付いています。翻って日本では、親は子供の、学校は生徒の、企業は社員の、政府は国民の探検や冒険への精神を「身勝手な迷惑行為」「心配させる恩知らずな行為」「禁止すべき危険行為」として抑制する傾向が強いように見えます。管理責任などという言い方もありますが、この「管理」はマネジメントではなくマネジメントの放棄です。

ビジネスにおいても、スポーツにおいてもチャレンジとアドベンチャーを支援し、成功を祝いあう社会と文化を育てることが、一人ひとりの実り豊かな人生と、明日の日本を築いていくことになるのだと私は確信しています。

図:リスクに関する誤った受容概念
※ハイリスク・ハイリターンという言い方がよく使われる。その逆としてローリスク・ローリターンなどとも言う。ハイリスク・ハイリターンはギャンブルでありローリスク・ローリターンは良くも悪くも堅実な行動原理だと考えられている。ローリスク・ハイリターンな仕事はおいしい仕事だし、ハイリスク・ローリターンな行動は誰かのカモになっている。しかし、ハイリスク・ローリターンでも必要とされる行動はたくさんあるし、ローリスク・ハイリターンな仕事のみを狙い続ければ良いというわけでもない。このような分類は行動の指針とするには不十分なのだ。

図6:マインドのチェンジ

マインドのチェンジ
社会課題とは、何らかの事柄が、期待される姿に対しマイナス領域にあるという状態である。振れ幅の大きな(ボラティリティの大きな)試みは課題をより良く解決できる可能性がある。下振れに対するセーフティネットを考えつつボラティリティの大きなチャレンジをしていかなければ、持続的な成長はかなわない。
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『intelligence3.0』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。