当面はそれまで通りの「A&Z社」と一部少量ではあるが他社の基盤の下請業務を継続していた。しかしながらそのままでは利益の確保もほとんど見込むことができす、従業員の賃金の向上が難しいことは明白であった。

小松社長が狙ったのは、30代から40代の中堅サラリーマン向けのビジネスゲームであった。

若年層向けには、既存のメーカーに太刀打ちすることは困難と見て、どちらかというとあまりまだターゲットとして見られていない少々お堅いまじめ人間を対象とした。

その内容は、ある製品の売上、生産、在庫、増資、銀行からの借り入れなどを予測する。そして実際の市場からの売上によって、経営状態がどのように変化していくのかを体験するビジネスゲームである。

社長の一つの決断により、大きく飛躍することもでき、またちょっとした油断から倒産することもある。新しい製品は従来の基盤をつくるだけの工程及び作業とは大きく異なっていた。

従来の基盤製作の他に、材料の購入、機械加工、一部外注化、組立作業など、今までにない新たな工程や作業を着実にこなしていかなければならなかった。

新ビジネスの着想から生産開始まで2年、従来製品「A&Z社」の基盤製作との並行生産で現場では当初かなりの混乱が生じていたが、平常稼働に落ち着いたのは1年後であった。

当初は赤字経営であったが3年後からようやく採算性の目途が立ち、5年後の現在では、わずかではあるが2期連続の黒字にまでこぎ着けることができた。

そしてこの年の正月、来年度の利益計画として売上高20億円、営業利益2億円という思い切った目標を立てた。小松誠43歳であった。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『企業覚醒』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。