すなわち、認知症はあまり遺伝が関係せず、頭部外傷・食事中のアルミニウムの摂取・うつ病が関係するのではないかということです。ハンセン病やリウマチ患者さんには、何故かアルツハイマー型認知症が少ないことも分かっています。

もう1つは、「前向き調査」で、現時点での症状の有無・程度別にいくつかの集団を設定し、将来にわたって追跡調査をしていくことで結果の発生状況を比較します。

認知症に関する前向き調査では、どのような人が認知症になり、どのような人が認知症にならなかったかを「大規模追跡調査」の結果から分析していくことになります。

その際、長期間にわたって、その人の認知機能と生活習慣や環境の状態など様々な要因との関係を調べることになります。多くの大規模追跡調査と研究の結果が、世界各国から論文として発表されています。

その中で、統計的に適正で信頼度の高い調査結果は、診療の現場で実際に活用されます。

その一部を次に紹介します。運動に関する調査では、日常の身体活動として、有酸素歩行運動を行うと海馬が増大し、一部の記憶機能を改善する、アルツハイマー型認知症の発病リスクを抑える、などの知見が報告されています。

食事に関する調査では、低カロリー食はアルツハイマー型認知症の発症を減じ、ビタミンEを食事で多くとると認知症になりにくい、などの調査結果が発表されています。

生活習慣病との関係については、高血糖と高血圧とは認知症の危険因子である、などの結果が出ています。このように、多くの大規模追跡調査の結果から、生活習慣病が認知症に関与していることが明らかになってきました。

生き甲斐に関する調査では、人生の目的を持っていると脳が保護される、人と交流することや、趣味を持つことが認知症予防に効果的である、などの見解が示されています。