在校中は落ちこぼれながらも、高校が好きだった。

30代、仕事まっさかりで公私共に上昇している魅力的な同級生に出会って、さらに好きになった。

そして40代、人生の折り返しを過ぎこれからの自分のあり方を考える今、時間と空間を共有した青春時代と夢を語り合える彼ら彼女らの存在をありがたく思い、ますます「この高校に行ってよかった」と実感している。

12.新しい春

この春、生活環境が変わった。念願の大学院生となった。ここ十数年、毎年年賀状を書きながら、なに何も変化を伝えられないことをもどかしく思っていた。

友人たちは「結婚しました」「子どもが生まれました」と、さまざまな経験を積んでいたから。

3年前、外国人タレント事務所を経営する稲川素子氏の講演を聞聴いた。

タイトルは「シルバーパスより学生パスで」。病のために慶應義塾大学を中退していたのを65歳で再入学し70歳で卒業。その後何度かの挑戦を経て、東京大学の大学院生になった。

今、学生パスを有効に使いながら楽しんでいるという、仕事にも勉学にもエネルギッシュな70代のご婦人の話だった。

新聞記者の友人は、40歳を過ぎて1年間休職してイギリスに留学し科学コミュニケーションを学んだ。高校の後輩は、30代後半に県職員の立場で2年間京都の大学院で公共政策を究めた。私の周りで、ある程度社会を経験してさらに勉強する女性たちの活躍を耳にするようになった。

数年前から私のなかでも真剣に学びたい気持ちが頭をもたげていた。大学時代にきちんと勉強しなかったことに負い目があった。「私はこのままでいいのか?」というあせりもあった。会社を退職してからも一生取り組める何かを見つけたいと考えていた。

平均寿命までの長い人生を考えると、今、何か自分の人としての価値に+α(プラスアルファ)のものを身につけなければという危機感があった。彼女たちの頑張りにも刺激を受けた。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『思いつくまま』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。