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従業員の被害

最後に、私が見てきた労働争議において、経営者の視点からの危険度だけではなく、インドの従業員も被害を受けた事例を付け加えます。

【事例1】

同じ職場からの従業員から暴行をうける。一部の従業員が外部組合活動者に洗脳され、組合活動が始まると、社内の組合活動家が近隣や同じアパートに住む同じ会社の人間を組合活動に引き込もうとする。

会社に対して数で意見を通そうとするためであり、洗脳された人間は、あらゆる手段をもって、嫌がらせや傷害行為に走ることになる。具体的には、私が見た事例では、同じアパートに住む社内組合活動員が、組合活動を嫌がる会社の同僚に暴力をふるい、けがを負わせる事件があった。被害届が人事に上がり、会社はその従業員を会社近くのホステルに避難させた。

【事例2】

前記の嫌がらせのような勧誘行為で、出勤したくても部屋から出られない事例が相次ぎ、数十人単位で会社近くのホステルに避難をさせ、そこから出勤してもらった。

【事例3】

サボタージュが起きた段階で、臨時に、俗称Strong Contractor(組合活動に迎合しない人物を派遣できる派遣業者)から人員を派遣してもらった。

その人たちへの妨害工作を防ぐために、会社の敷地内に寝泊まりしてもらい、会社が衣食住を保証しつつ工場で働いてもらった。移動の自由が制限されることの辛さは、新型コロナウイルスで外出自粛を経験した皆様にはお判りのはず。

労働争議の顛末では経営者の言い分が広がりがちですが、従業員の皆さんも辛い思いをするのです。ですから、日頃の規則順守、規定に従った行動の躾、経営者との良好な意思疎通による、被害の最小化のための予防措置が重要なのです。

第3章 現在のインドを俯瞰して〜プロジェクトの思い出

インドの仲間とは、苦楽を共にしながら多くのプロジェクトをやり遂げることができました。某州にある企業を上場会社から非公開会社に変える、インド地場企業から事業買収、合弁運営、別の子会社に吸収合併などがありました。

また、インドに市場経済をもたらすためのインフラ整備と規制緩和など、その成功を喜びあいました。【規制緩和活動の事例】在インド日本大使館、インド日本商工会の皆様に、あらためて感謝いたします。

①国道8号線高架工事…例=ヒーローチョーク、IMTマネサールの高架…グルガオンからマネサールまでの通行時間が2時間から30分に短縮。

②デリー外環状…KGPとKMPの全線開通。トラックのデリー通行禁止の最高裁判決を順法し、デリー外環状でハリヤナ州、ノイダ間の移動が可能となった。一部試算では、経済効果は数千億円。日系企業の物流費低減は年間数千万円。

③KGPの交通システムのための円借款68億円の供与。

④会社法前年取締役居住義務の撤廃…取締役期間内1名インドに滞在の義務になり、日本企業のくびきが一つとれた。

⑤配当分配税の撤廃…日印租税条約第十条、配当への源泉最大10%の有効化。在インド日系企業の連結財務諸表での資金良化、年間50億円。