一ノ瀬純が122点で1位となる。2位とは30点以上の差でダントツである。

「次は翼の番だぞ」

「はい、バッジテストですよね」

「そうだ。来年この舞台に立つためには、5級は合格していないといけない」

「頑張ります」2人のやり取りを聞いて微笑む三枝子。

横浜アイスアリーナリンク。翼のバッジテストの前日、リンクに出ると健太がやってくる。

「この間は応援してもらったのに情けなかった」

と下を向く健太。

「でも最後の3回転ジャンプは良かったよ」

「ありがとう。翼ちゃんはバッジテストだろ、頑張れよ」

「ありがとう」

「翼、そろそろ練習開始するぞ」

「はい、健太君またね」

健太も手を振って去っていく。

「それじゃ、サークルを描く練習から。どんどんやってみて」

「はい」と言いながら、4つのパターンのサークルをスムーズに描いていく。

バッジテストの日になる。初級、1級は、問題なく合格。2級の試験になる。2級の試験は3名。小学生と中学生だ。まずエレメンツでフリップ、ループ、そして2つのスピン、ピボットを行い最後にサークル。

翼はほぼ完璧にこなすが、顔に疲れが出ている。次にセットパターンステップ。フリースケーティングにジャンプやステップの要素を入れて行う。気力を振り絞りスタートする、

最初のフリップを完璧に跳んで笑顔がこぼれる。その勢いでステップや他のジャンプも成功させ、翼は満足した顔でテストを終了する。

リンクから上がるとすぐに合否が伝えられ、見事に合格! 翼はやったーと叫ぶ。

翼がエントランスホールに出てくると三枝子が駆け寄る。

「翼、おめでとう!」

「ありがとう」

剛もやってきて

「よくやった」

「コーチのおかげです」

と満足げな顔の翼。

「この調子で5級まで一気にいくぞ」

「はい」

「よろしくお願いします」

と三枝子。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『氷彗星のカルテット』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。