二 日本文化と世界

16 幸を招く

十二月。毎年のことながら、目が回るほど忙しい月だ。行く年の総決算と、来る年に備えての準備。大変ではあるが、新玉の一年を清々しい気持ちで迎えるためだと思うと身が引きしまる。

その忙しい中にも、古くから続く年中行事を忘れず受け継いでいく。それが、日本人のこころの優しさだ。師走も半ばを迎えた家々の玄関口。冬には珍しい緑が立ち並び始める。そう、門松。

一年中葉を落とさない木は「常磐木(ときわぎ)」と呼ばれ、神様が宿ると言われる。黄色い実をつけて、一年中青々と葉を茂らせる橘などが常磐木の仲間。中でも松は、神様を「祀る」特にめでたい木だと言われた。

能舞台にも松は数多く登場する。橋掛かりに沿って並ぶ一の松、二の松に三の松。鏡板には、とりわけ大きく美しい松の絵が描かれている。

門松は、新しい年を連れてくる年神様の依(よ)り代(しろ)だ。

松を飾る日にも、様々な言い伝えがある。「松の内」が始まる十二月十三日以降のいつ飾ってもいいが、十二月二十九日は「二重苦」に繫がるのでよろしくない。十二月三十一日に飾り始めると、「年神様をもてなす期間が短くなる」ので避けられる。新しい年の幸運を呼び込むためには、年の瀬まで飾るのを怠けるような無精者ではいけない。

おかしいのは「クリスマスに飾るのは避ける」と言う風習ができたこと。クリスマスツリーと門松が並ぶ光景は、そういえば見たことが無い。日本に入ってきた新しい風習にもうまく馴染んでいく。伝統が長年受け継がれるためには、柔軟な変化も必要ということだろうか。

飾って福を招く縁起物には、「酉の市」で売られる熊手もある。ただの熊手ではない。人びとはこの熊手で福をかき集め、自分のもとへとかき込むことができると信じる。熊手には小判や鯛、七福神。

縁起物を満載した華やかな飾りがあしらわれる。大きさも様々で、手に入れたい福が大きいなら、大きい熊手を買うものだとも言われる。

威勢の良い大きいことはいいことだ。でも、日本の島国的発想がしないでもない。幸せを招くのは大きさだけではないからだ。自分だけが壽福を招き入れると誤解されるのも残念だ。来る年は皆が幸せになりたいものだ。

※本記事は、2018年11月刊行の書籍『世を観よ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。