母ちゃんを求めて、初の自転車旅行

朝目が覚めると、既に母ちゃんがいない、今日は日曜日! でも母ちゃんがいない「そうだ母ちゃんの働く仕事場に会いに行こう」、たしか小学二年生の頃、小さな子供が自転車に跨り、隣町とはいえ距離約一五キロの中富良野町という町で、土建業の道路工事現場で、飯場(大規模な土木工事や建築現場での作業員用の給食や宿泊施設のこと)と言われる日雇い人夫(にんぷ=日雇い労働者のこと)さんが暮らす、プレハブ住宅の給食おばさんに雇われていた母ちゃんの職場、住所もどんな工事現場なのかも分からないまま、茂少年はただただ母ちゃんに会いたく、母ちゃんの顔を見たく、ひょっとしたら「よく来たよく来た」、と褒めてくれるのではと、その一心で自転車をこぎ続けたのです。

小さな田舎町に突如現れた汚い洋服姿で、小さな自転車に跨り、飯場で働くお母さんを探して、富良野スキー場の麓から探しに来た! すぐに噂は町じゅうを駆けめぐり、いとも簡単に母ちゃんと会うことができたのです。

今となっては、そんなに簡単に探し当てることは不可能と思うのですが、きっと相当数の方々に、忙しい中、大変ご迷惑をおかけしたものと思います。

この場をお借りして、心から感謝とお礼を申し上げます。ありがとうございました。

その時ご迷惑をおかけしました茂少年は、六五歳になり一人旅は、今も続けています。

母ちゃんの顔を見たとたん「うぇーん!」、のどチ○コもまる見えになるほど、大きな口を開け、大粒の涙がどぼどぼと頬を流れ落ちたのです。

びっくりした母ちゃん(まずは一撃のげんこつ)、そしてすぐに抱き寄せ、強い母ちゃんのほっぺたから、落ちてきたちょっとひんやりとした涙雨の感触は、今も忘れることはできません。母ちゃんの口癖「茂おまえには、いつも母ちゃんは驚かされ、そのたびに母ちゃんのない金○が、上がったり下がったりするんじゃ、もうちょっと静かにできんか?」、

意味不明なるも聞き分けのいい茂「母ちゃんごめん! ごめんね母ちゃん! ううぇーん! だって淋しかったんだ」。

母ちゃんが作った飯場飯をたくさん頂き、会社のご好意により、その日は母ちゃんとともに家まで車で送ってくれたそうです(社会人になって聞かされました。本当にお世話になりありがとうございました)。

佐々木式お礼の仕方、★「ありが父さん ミミズが母さん ありが一〇なら いも虫二〇歳」てなことを言いますが、なんです? そうです特に意味はございません。

【知ったかぶり】

とう(一〇歳)で神童、じゅうご(一五歳)で才子、はたち(二〇歳)過ぎれば並みの人=これって茂のことなんだ。

んん! そのとおーり!
 

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『心の駅』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。