特攻大作戦

次に起こったのが、クラカタウの噴火より大きな政治的火山爆発だった。

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ある競合する港湾管理会社がこの契約の公表されたのを見て、ロビイストを雇い、上院議員のチャック・シューマーに反対するよう説得したのだ。シューマーはこのチャンスに飛びつき、中東地域の友好国ドバイと敵国を区別することなく、ギリギリの差別用語『アラブ』による買収と言い、この取引を公然と非難した。シューマーは9.11の被害者家族と派手な記者会見をしている最中にこれをやった。熱狂する反対は党派を超えた。共和党のデニス・ハステートはDPワールドによる買収を阻止するための議員立法を計画した。

共和党上院議員ヒラリー・クリントン(ニューヨーク)とロバート・メネンデス(ニュージャージー)はシューマーのDPワールド反対活動に加わり、独自の立法を計画した。このトップランクの政治家による、問題のない港湾事業買収案件を政治問題化する動きに直面した大統領ジョージ・W・ブッシュは取引支持を強化した。2006年2月22日ホワイトハウスはこの取引停止を求めるいかなる法案に対しても拒否権を発動すると脅かした。

この政治的火の嵐のまっただ中、DPワールドはCFIUSアドバイザーに前大統領のビル・クリントンを雇った。この結果ビル・クリントンが支持する取引をヒラリー・クリントンが反対するという奇妙な見世物になってしまった。クリントンファミリーが敵と味方に分かれて争ったのだ。

メディアと政治の大騒ぎの裏で、現実には譲歩案の一環としてドバイは内密にCIAに対しその要員を他のDPワールドの港湾施設に配置することを認める契約をした。この人員配置によって通常アクセスが困難なアフリカ、中東、南アジアの港湾から貴重なインテリジェンスを収集できる体制になる。この取引をぶち壊していれば、シューマーとヒラリー・クリントンはアメリカの安全を維持するのに必要な諜報共同体の能力を損傷させるところであった。