二 日本文化と世界

13 七夕と二人の物語

晴れた夜空に仄かに明るく、帯を掛けたように、また雲のようにも見える天の川。古より人々はその美しさに神秘性を感じる。想像力を膨らませ、願い事、また祝い事の一つとして生まれたのが七夕だ。祭事、祝事は節句と呼ばれ、五つあるといわれる。七夕もその一つ。

七夕は「天上界と人間界」との愛と悲しみの物語だ。天界に住む織姫。人間界の純な青年「牛飼い」との物語。「牛飼い」の名前は牽牛郎(かぎゅうろう)。織姫は天帝の皇女の中でも一際美しく、雲錦(うんきん)という天女の衣を織っていた。人間界に興味と冒険心、そして憧れを感じる。

許されない地上に、こともあろうに羽衣を纏って降り立つ。そこで牽牛郎との劇的な出会いとなる。二人は結ばれ、幸せな日々を送る。

しかし、幸福はそうそう長続きするものではない。天界の規律を乱したことにより、天より軍隊が送られ、二人の仲は引き裂かれる。織姫は再び天界に戻される。

牽牛郎の「牛」は自分の死後、その皮で靴を作り、天界に昇るように言い残して身罷る。愛牛の遺言のままに靴を作り、人間界から天上界に上がることができた牽牛郎。織姫を探し求め、探し求め、ついに奇跡的な再会を目前に果たすかのように見えた。

その瞬間、天界の王母と他の皇女は、許し難い事として、王族の印である金の簪(かんざし)を抜き取り、神力をもって大きく振り下ろす。すると天にかかる大きな川に大波が打ち寄せ、二人の間を引き離してしまう。

その後、王母と皇女の計らいにより年に一度だけ、牽牛郎は橋を渡り織姫に逢う事が許可される。その日が七月七日なのである。

シェイクスピアは戯作「ロミオとジュリエット」の中で、「愛とは煙のようなものだ」という告白をする。それは一時の恋愛の姿であって、人類の愛とは異質のものであると私は思う。

「人類愛」というのは普遍的なものであると思うから……。

 

織姫の物語は唐の時代から脈々と伝えられた中国の説話で、人間のドラマに置き換えて近世、いろいろな劇作にもなった。私も織姫の物語に思いを巡らし、「現代」そして「人とは何か」と想起する。

 

中国、日本、韓国、ベトナムでも行われる七夕の節会。その時、夜空に美しい銀河を見たいものだ。

※本記事は、2018年11月刊行の書籍『世を観よ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。