第4章 認知症をどのようにして予防するのか?

認知症の発症のリスクを少なくすることには、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症など)の対策、うつ状態や廃用萎縮の防止と早期対処、脳の活性化を図ること、MCI(軽度認知障害)の早期発見と対処などが必要です。

脳の老化が認知症につながる!?

歳を取ると、人や物の名前が思い出せなくなったり、暗算するのが面倒くさく感じたり、新しいことを始めるのが億劫になったり、新しいことが記憶できなくなったり、瞬間的な判断が遅くなったり、性格が頑固になったり、逆に必要以上に気弱になったりすることがあります。

これらのことは必ずしも病気とはいえず、脳の避けがたい老化が進んでいるだけなのかもしれません。

脳の老化は20歳頃から始まるという見方もあります。脳の神経細胞は140億個以上もあるといわれ、さらに20歳を過ぎると、1日に10万個以上は減少していくともいわれているからです。

これが年齢の増加とともに誰もが経験する「脳の老化」の進行で、高齢となってからの認知症につながっていきます。「若い者には負けない」なんて思わず、自然体を受けいれることも必要です。ただ現状に無為であっては良くありません。できるだけのことはしていきましょう。それが、高齢社会にあっては、新しい生き方です。

それでは、脳の老化を早めないためには、具体的にどのようなことをすればよいでしょうか。そのためにはまず、次のような簡単なことに気配りをすることが大切だと考えられます。

◎身体を動かすこと

散歩(ウォーキング)などの軽い運動は、全身の血液循環を良くしますので、神経細胞へ酸素やブドウ糖など栄養素が過不足なく補給され、神経細胞の減少を最小限に抑えることができます。少くとも1週間に3回30分間、うっすらと汗をかくくらいの有酸素運動をしましょう。

◎手先を動かし、頭を使うこと

絵を描いたり、計算をしたり、日記をつけたりするなど、意欲的に手先や頭を使うことが脳の老化予防に役立つといわれています。また、年齢を忘れ、新しい趣味に挑戦したり、積極的に人と付き合ったりすることも、日常生活に張りをもたせ、脳を刺激し、脳の老化を遅らせます。社交、スポーツ、ジム、図書館、地域コミュニティ、ハイキング、山歩き、短歌・俳句教室、将棋、囲碁、麻雀、太極拳などもお勧めです。

◎脳に栄養を与えること

脳がエネルギー源として直接利用できる栄養素はブドウ糖だけですが、脳が正常に機能するためにはその他にも多くの種類の栄養が必要です。

なお、食べ物から栄養素を効果的に吸収するためには、腸を健康に保つことも大切です。そのためには、繊維質の多い食物をとることです。
 

 

※本書で紹介している治療法等は、著者が臨床例をもとに執筆しております。万一、本書の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。また、本書に記載している薬剤等の選択・使用にあたっては、医師、薬剤師等の指導に基づき、適応、用量等は常にご確認ください。

※本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。