半年ほど経って、二人目の北上(きたかみ)あやが別荘をたずねてきて舞姫に加わった。

植森朱美は自分と同じ立場の仲間ができたことを喜んで歓迎し、ひと足先に入って覚えた月夜の舞いの振り付けや、巫女(みこ)のような袴(はかま)の衣裳の身に着け方など喜んで教えた。北上あやは、音楽の専門学校に通った経歴があり、歌唱力には少々自信がありますと答えていた。

選択科目のダンスも習ってそこそこできたので、世話好きそうな朱美に励まされ、その、のびやかな舞い方に素直に従いながら、集まる趣旨に朱美とともに賛同して自分の調子を活発に出せるようになっていった。一つ年上の植森朱美と同じように、高雅な高弥さやの人格を北上あやは尊敬した。

その後一年ほど月日があいて、三人目の小竹(こたけ)悦子(えつこ)がたずねてきて舞姫に加わった。

小竹悦子は細身の均整のとれた体つきをしていて、舞いやバレエについては中学校時代にフィギュアスケートの実技指導を受けていましたと答えた。

はじめはやや気おくれの目立つ態度に見えたが、先輩の朱美とあやに喜んで迎え入れられたことを自覚してから、悦子なりに打ち解けて仲間意識を持てるようになった。

あやより一つ年下だったが、朱美よりも賢そうな言動をすることがあって、上手に対等な仲間関係のように近づいてきた。小竹悦子にとっても主(あるじ)の高弥さやは優れて魅了されるところがあり信頼に値する人と映った。

半月後、四人目の町宮(まちみや)菊絵(きくえ)と五人目の芹川(せりかわ)郁代(いくよ)が、一人ずつ間を置かずにつづけてたずねてきて舞姫に加わった。二人とも小竹悦子と同年齢で、ともに二十三歳で仲間に入り、同期で新しく入った三人のように、菊絵も郁代も悦子とすぐ親しくなった。

半月分先に入った悦子が少しずつ慣れた態度を強めてゆくと、後の二人も真似をするようにして足並みを揃えながら、朱美とあやの振舞い方を見て倣(なら)い、高弥さやのことを宗祖として信者のように付き従った。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『―悲劇― 月夜と五人の舞姫』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。