厚労省の考え方提示と日本医療法人協会見解

院内調査は、できる限り当該病院等のスタッフで調査を完結できるよう努める。

自立性と自律性の原則に鑑み、安易に、第三者の専門家に丸ごと依頼するようなことは避けるべきである。院内調査は中立的に行うべきものではないし、完全に中立な人間など存在しない。

院内調査は、再発防止・医療安全の推進を目的として行われるものであるから、現場の実態に即して密着して行うものである。医療の専門家には、当該専門領域の専門家、当該病院等と共通の現場・地域性に通じた専門家あるいは病院規模・経営主体により適切な人材が異なるなど種々のケースが考えられる。

医療の専門家とは、専門医あるいは学会関係者のみではない。専門家の支援を求める際には、管理者は、当該事案に適した専門家を求めるよう努めるべきである。

依頼すべき外部の専門家としては安全工学の専門家は必要であろうが、法律家は必要ない。法律家を必要とするのは、紛争処理であり、医療安全の組織においてではない。

○院内調査の報告は、遺族に十分説明すべきであるが、報告書は開示すべきではない。開示を行えば、再発防止の仕組みではなくなり、紛争と混乱が起こる。秘匿性・非懲罰性の原則は必須である。

○第三者機関は複数の民間機関であるべきである。唯一の組織であってはならない。○本制度は医療安全・再発防止の仕組みであり、医療事故に関わった医療関係職種の責任追及・過失認定の結果をもたらしてはならない。秘匿性・非懲罰性は厳格に守らなければならない。

○第三者機関は複数認定すべきである。本制度は当該病院等の自主性・自律性に基づく院内調査を中心とするものであり、第三者機関を中心とするものではない。第三者機関の調査は、院内調査に優越するものではない。あたかも、第三者機関が優越するがごとき状況をつくってはならない。

○第三者機関関係者には厳密な守秘義務を課すべきであり、個別事例につき、警察その他行政機関への報告を行ってはならない。医師法第21条に関しては、田原課長発言、大坪室長発言に基づき、厚労省は誤解の解消に努め、死亡診断書記入マニュアルの法医学会ガイドライン参照文言を削除すべきである。

(以下、個別項目についての意見が続くが省略する。)

これを見ただけでも当時の流れや、当時の日本医療法人協会の意見が医療事故調査制度の原型になっていることがおわかりいただけよう。

しかし、落着までの道筋は簡単ではなかったのである。科研費研究班の混迷の結果、再結成された厚労省医政局長所管の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の論戦の結果、やっと現在の制度に落ち着いたのである。

・医療事故調査制度論議のなか、医師法第21条が外表異状で確定