ところで、進化を速める上での有効な理論はありませんが、有効な方法ならばあります。

それは作っているものを弄り回すことに尽きるということです。弄っているうちに、手や身体が何となく新しい方向を感じてくれるのです。

弄るという言葉ではイメージが正確に伝わらないので筆者はこの作業を「弄り験」と言っています。頭の中だけでは出て来ない新しい構造構想を呼ぶ唯一の方法だと考えています。

最後に、進化の終着点はどのように判断したらよいかについて触れておきたいと思います。

限りのない進化に頂点を設けることは難しいのですが、個人的にはものとしてのデザインを考えるようになったら完成に近づいたと思って良いのではないかと考えています。日常生活用品の感性に関わる面に関心が移るようなら技術的に煮詰まって来たと考えられるからです。

理屈っぽい話はこの辺にして、これから生物模倣工作の実例紹介という楽しいショーに皆さんをご案内したいと思います。

個々の工作例では、「独り言」の項で自分の感じた生活用品への前向きな不満を、「夢は?」の項でどのような経緯でどんなものが出来たかを、「どう作る?」の項で具体的な作り方を記してあります。

本書は電子書籍なので写真の拡大が利きますから、模作等を試みられる際にはその機能を利用していただければと思います。

ところで、工作例には2、3日で出来上がってしまったものや何年もかかったものが混在していて、一様には扱えないところがあります。

進化に何年もかかったものは、作り方も微妙なところがあり、紙面だけでは伝えきれないので、どちらかと言うと使い方の面白さを味わっていただけるよう、ものの説明に力を入れました。

また、進化論的ものつくりの面白さや不思議さを味わっていただけるかと思い、出発モデルの経緯も適宜紹介することにしました。

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『生物模倣工作のススメ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。