必要な睡眠時間は、個人差があるので、一般的に言われることは参考にするしかない。長ければ良い、短ければ健康に悪い、と一概に言えない。睡眠は一人一人に与えられる、天からのオリジナルなプレゼントだ。

その証拠に、雨は一斉に人々に与えられ、風も皆が一斉に感じるが、睡眠だけはとても個人的なくつろぎの体験だ。一つ一つ個別の睡眠時間を与えられ、中身も千差万別である。

中身とは「夢」そして「睡眠中の体験」だ。夢の他に何を体験するかと言えば、それは「遊泳」だ。眠っている体から何かが出て行き、遊泳する。

その範囲には個人差があり、近所をまわるだけの人から、日本を脱出する人、宇宙空間にまで行く人も、ごく少数おられるようだ。当然、遊泳をせずに夢だけ見る人もいれば、夢も見ず静かに横たわっているだけの人も多い。睡眠中の行動範囲の差は、どこから生まれるのか。

それは魂の年齢による。

古い魂の持ち主は、遠くに行こうとする。何故ならば、生きているときの経験が豊富な分、長い「軌跡」を所有しているからだ。軌跡を使って遠くへ行くことができる。

新しい魂は短い軌跡を使って、近くを見廻ることができるが、体内から出ずに留まるだけの魂もある。このように話すと、「遊泳するのは、魂のことか」と思われるかもしれない。

しかし、魂は生きている人間の体を離れない。遊泳するのは霊体と呼ばれるものだ。西欧では「霊体はスピリット」、「魂はソウル」と呼ばれている。魂のソウル(soul)は、「足の裏」「唯一」という意味のソウル(sole)と別の単語だが、どちらも常に人の足元を離れない。

霊を意味するスピリットの英単語には「元気づける、ひそかに運ぶ」という意味もある。軌跡とは何か?具体的に言えば歴史のことだ。よく「歴史の足跡をたどる」と表現するが、「足跡」が軌跡だ。

足跡にはヘッコミしかないが、進む人や戻る人の道しるべとなり得る。つまり、軌跡は霊体の道しるべとなってくれる。睡眠の話に戻ると、睡眠中は、この道しるべがその働きを行う時間だ。

起きているときは何の実態もない、見えない軌跡、足跡だ。睡眠が始まると活躍し始め、過去へも遡る体験もし、未来へ伸びようともする。未来は過去を投影しつつ、創られていく。

過去へ戻りつつ、未来像を創り出すという、不思議なメカニズムが起こることもある。過去、現在、未来は切り離せない、川のようにひと続きに流れている、と考えてみる。

そうすると、「こんな軌跡もあり得る」と思い当たる方もおられるだろう。