社会全体でベクトルが出来上がったときの日本は、強いものがあります。創造力に欠ける日本人だと言われ続けてきましたが、眠っていた日本人の感性が、呼び覚まされるのではないかと思います。

江戸時代の武士が静岡の茶畑の生産者になり、鹿鳴館で新しい文明を享受し、アメリカ型のライフスタイルにあこがれて、瞬く間に、新しいスタイルを実現したことを振り返りますと、この新型コロナによって日本社会は創造的な国に生まれ変わる可能性があります。

生き生きとした若者が増えてくるのではないでしょうか。

時間と空間コストが消滅する

ここで、もう一度産業革命のおさらいをしておきましょう。

第一波(18世紀後半)では、蒸気機関が、第二波(19世紀後半)では、電気と内燃機関によって、電力と自動車産業が生まれました。

第三波(20世紀)では、コンピュータ、インターネットなどのデジタル技術によって、私たちの頭脳労働は飛躍的な発展を遂げました。そして現在の第4次産業革命につながります。

第一波の蒸気機関、第二波の自動車、第三波のインターネットという技術革新に共通するのは移動です。私たちは活動範囲を広げたことを指して、産業革命と呼んできたと理解することができます。蒸気機関と自動車は、モノを移動させる時間を劇的に小さくし、インターネットは、モノ以外の知識を移動させる時間を劇的に小さくしました。

産業革命によって移動時間を劇的に短縮し、移動コストを減らし、生産性を向上させることで、人類文明を進化させてきたと考えてよいでしょう。

今日の私たちには、すでにモノとモノ以外の移動に関する技術は整っていました。

その上でスマホが登場し、個人間に知識を移動させる動きがSNS(Facebook・Twitter・Instagram・LINEなど)で急速に広がりました。

しかし、企業経営者は、企業と個人の行動には違いがあると考え、社内におけるオンラインの一般化は遅れていました。ビジネスにはフェース・ツー・フェース(face to face)が不可欠であるとの考えが説得力を持ち続けました。

人に会わずに商談を進めることは失礼であり、手抜きの発想は許されないというものでした。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。