ヒップホップに導かれて渡ったアメリカで目にした、現実現代の「個」の在り方を問いかけるリアル・ストリート・エッセイを連載にてお届けします。

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レイシスト

プロジェクトの入り口に続く通りを私たちは6人で占拠していた。ここの住人たちは興味津々な様子で私たちを物色していく。

「このアジア人の女はいったい何者なのか」。

おそらく皆、そう思っているにちがいない。5、6歳の少年が私たちの間を恐る恐る通り抜けようとする。彼は脅えるような瞳で私たちの様子を窺う。

それでも彼らに対して、憧れに似たような気持ちも持っており、Bたちのことが気になって仕方ない、そんな彼の複雑な感情がこちらまで伝わってくるのだ。動揺している自分の心の中を見透かされまいと、少年は必死に強がっている。

その少年はTシャツを上にまくり上げて見せた。腹を出し、思い切り肩を張る。まるで、周囲を挑発しようとしているかのように、大股でゆっくりと私たちの前を通り過ぎていく。それを見てBたちは腹を抱えて笑う。

マイク・タイソン似の男性が、“Yo!”と少年に声をかけた。

ジーンズのポケットの中からクォーター(25セント)を何枚か取り出し、地面に落とした。他の仲間も、この少年が果たしてコインを拾うか拾わないか目を見張っている。

少年はとても困った表情で、静かにコインに近付いてきた。自分はどうするべきか。少年は明らかに迷っている。私には、この状況がとても不快に感じられた。私は堪らなくなり、思わず口を挟んだ。

“Hey,stop! What are y’all doin’? Stop!(ねぇ、やめなよ! あんたたち何やってんの? やめなって!)”

Bは私を横目で見遣ると、少年から離れた。他の仲間たちも、それに続く。彼らは何事もなかったように話を再開する。しだいに喉が渇いてきた。

「何か飲むか?」

Bが言った。

「うん」

「これから買いにいくけど、一緒に来るか?」

「うん」。

自称レイシストではない彼だけをこの場に残し、私たちはLiquor Storeへ向かった。