僕の場合は自分の指先一つで作る古典的な製法の方が性に合っているんだろう。

「絵は写真より綺麗に描くのに、デジタルは苦手なんだな」

「そうみたい。でも、健ちゃんのフィギュアは凄いね。アニメキャラの女の子が手のひらサイズで生きてるみたい」

「下ネタか? でも、まぁ自信はあるな。これでオナる奴いるかも」

同じ樹脂なのに本当に胸とおしりのあたりなんて柔らかそうで、健ちゃんが作ったアニメキャラっぽい女の子は女性のありとあらゆる女性的な部分が強調されていて、それでいて色気は控えめで、可愛いフリフリとしたある意味精密な水着を着ている。

塗装したら本当にイケないコトに使う人がいそうなほど、完成度が高かった。他の人の作品を見ても健ちゃんの作った女の子が一番命が吹き込まれているような気がした。

「でも、これだけで成績が出るわけじゃない。俺も絵とか色彩センスもっと磨かないとな。就職はプロの原型師狙っているけど、モデリングの仕事って言っても基礎は絵だからな。課題はまだまだある」

健ちゃんは、自分の作品も謙遜しないでちゃんと褒めるところは褒めるし、突き詰めたい技術の課題とちゃんと向き合っている。

僕もそうしたいけど、芸術家という漠然とした夢だけで、僕は止まっている。

その結果がこの酷い出来の3Dフィギュアだ。城間さんには依頼された、あの日以来会えていない。学科が違うから校舎も少し離れているし、会いに行く勇気がなかった。

それで結局、ブローチを依頼されてから一週間たっても完成させられてない。それどころか材料さえ手に入れられてないのが僕の現状で、早く作らないとなぁと思う反面、材料も今まで適当に買っていた木材ではなく何か特別な木を使いたいと思ってたりしていて、まだ何もできないでいる。

「あのさぁ健ちゃん。城間さん怒ってるかな」

健ちゃんは自分のフィギュアを展示台の上に戻すと、唇を尖らせながら首を傾げた。

「まぁ依頼してきた次の日にお金持ってきて、ソレを受け取ってるわけだから、納期は早い方が喜ばれるんじゃねーの?」

「だよね」

彼女は依頼してきた次の日可愛らしいリスの絵が印刷された封筒にお金を入れてラブレターでも渡すみたいに下を向いたまま僕の胸に押し当てて

「よろしくお願いします」

とだけ言って走って行ってしまった。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『100点をとれない天才の恋』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。