捜索は登山道はすべて、出羽武蔵山脈まで歩きつくした。サクラの行くはずだった追分からの常道コースは、捜索一日目に、案内人の山岳捜索隊が三メートルものイタドリをかき分け切り倒し、機動隊が通って鬼塚にたどり着き、何もみつからなかったという。さらに捜索二日目、反対コースで鬼塚から追分に向かい、やはり何一つみつからなかった。当然、人を増やした昨日、竹谷温泉コースも歩いている。

遺留品が何もないってどういうことだ? これじゃあ母も納得しまい。

一応打ち切り解散となったが、まだ戻っていない隊があるというので、武蔵山脈火口の前のレストハウス駐車場に、警察と一緒に車で向かった。

「これで打ち切りなんて。もう個人で頼むしかない」

明純が唇をかんでいる。レストハウスに着くと、父・良典からヒョウゴとイオリに話があった。明日土曜日、山岳捜索隊にお願いしたいが、どのように依頼すれば良いのか、坂崎に聞いてみたい、というのだ。ヒョウゴもイオリも、登りたいと言った。登りもしないで、あきらめられるか!

良典が坂崎に話すと、坂崎は渋い顔をした。

「一応、話してみますが……。もう戻ってくるのは山岳捜索隊だけなんですよ。今日は昨日より人数が多いので、山岳隊だけで危険な沢や雪渓に行った者がいるんで」

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『駒草 ―コマクサ―』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。