「私、母が私を責めることなくそうやってしてくれたことに感謝していて、でも、一体お祓いを、誰に聞いたのかと気になりました。母にそんな知り合いがいるなんてこと聞いたことがなかったので。私はもう中学生で、私が人よりも神経質なのだという認識はありましたから、私の言うことが、おかしいのかもしれないと、わかっていました」

「でもあなたのお母さんは、それを不思議だと言わなかった」

彼は優しく言う。

「はい。私自身が思う不思議なことの数々を、母は一度もおかしなことだとは言わなかった。いつも必ず解決策を持ってきて、私を安心させたのです。それが、なんだかとても、逆に不思議だった。私よりも私の感情を理解して、どうしようもなく絡まった心の糸を解いてくれた。母は、なんだか、私がそうなることを、知っているかのように思えたのです」

私はそうやって、母こそ何か、他の人と違うのではないかと思っていたことに気づいた。どこか達観したように感じる穏やかな母の雰囲気には、確かに少数民族の持つそれがあった。

「ふふふ。変ですね、私、何を話しているんだろう。すみません。全く、変な話」

ふと彼を見ると、彼は何か深く考えているような顔をしていた。私を見て、そして本棚に目を向けたりした。その頃の私を、母との会話や感情のやりとりを、彼は丁寧に咀嚼し理解しようとしてくれている気がした。そして彼は言った。

「今日、夜は予定がありますか?」

私は彼をさらに見つめた。彼の口元を見た。

「よければ、今夜、食事に行きませんか。僕は今日早くお店を閉めることができるし、もう少し、ゆっくり話しませんか」

それからの私は、待ち合わせの時間まで何度も時計を見て過ごした。何をしても集中できなかったし、どうでもよくなった。時間があったので、一度家に帰り、丁寧にコーヒーを淹れてみたけれど、味は全くわからなかった。