確かに男子中学生から、「坊主は恥ずかしい。いろんなところへ出向いて行けない」という声も耳に入っていた。そんな学校で、軍隊のような体育の授業を持たされた。

2年生2クラス合同で男女に分かれての40人ほどの授業であるはずだったが、男女合同80人の授業を指導しろ、というのだ。

「80人程度をしっかり統率して動かせなければ体育教師としてダメだ」

と先輩に言われ、断るすべもなく授業を行った。2年生の3学期ともなると、すでに十分に管理が行き届いていて、「男子全員坊主」の効果もあってか、一糸乱れぬといった感じだった。

体操着からして、男子は短パンに、女子はブルマにTシャツを入れてきれいに整列し、「体操座り」で視線もしっかりとこちらに向けている。

この時に初めて感じた違和感というか気持ち悪さは、そう間違っている感覚ではなかったようで、そのことについては第6章で論じることにする。準備体操もランニングも、軍隊のようにきれいに揃っている。

良かった点は、長距離走の単元であり、男子が1500m、女子が1000mのタイムを計測するという授業だったが、全員が手を抜くことなく、しっかりと走りきっているのが感じられたことだ。

2時間目になると、そんな生徒の一生懸命さに惹きつけられていって、ずっとタイムを読み上げながら、5分を切りそうな男子生徒の最後の一周には、「5分を切れるぞ!」と声を張り上げ、手で「来い、来い」というようなしぐさをしながら、「4分55、56、57……」と読み上げ、58でゴールすると、「やったー!」と、熱くなっていた。

生徒たちは、どうやらそんな若い熱血教師を快く受け入れてくれたようだった。とりあえず、80人の体育授業を一人で指揮することができるところを見せ、男女別にさせてもらうように先輩にお願いをし、聞き入れてもらった。

やはり男子のみ40人ほどの授業はやり易く、教育効果も高いと感じられた。さらには一クラスだけの20人ほどの授業は、よりやり易く、そのぐらいの人数がベストだと思えた。その感覚は今なお持ち続けている。

ただし、この時は、バスケットボールだったが、ソフトボールやサッカーなど大人数での球技では、ゲームの対戦相手が固定してしまうため、30人ほどがいいようにも思われるのだが。

授業の適正人数が、体育の場合は種目によって違ってくるので、授業展開における工夫が必要なのは間違いない。

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『教育現場の光と闇~学校も所詮〔白い巨塔〕~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。